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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年11月19日付け

 大統領選挙の第2次投票の前日、ある編集部員宅が強盗に襲われ金品を根こそぎ盗られた。別の編集部員の家のま向かいでは、日本人の主の留守中に賊が侵入して白昼堂々ごっそりと強奪していった。一味は選挙法(Lei 4.737/65)が有権者の権利として「投票日の5日前から投票後の48時間までは逮捕・拘置されない」ことを知っていて、あえて投票日前後に犯行を集中させているようだ▼投票を「全国民の義務」と定める憲法からすれば当然かもしれないが、結果として犯罪者の権利を守る、犯罪を誘発するかのような法律になっていることに首を傾げざるをえない▼当国の治安の脆弱さはアキレス腱ともいえるものであり、これを補強するために日本の交番制度を移植するポリシア・コムニターリア(地域共同体警察)普及がサンパウロ州軍警を軸に進展していることは実に喜ばしい▼このサンパウロ州軍警が手本となって、中南米カリブおよびアフリカのポ語圏諸国の計30カ国に対して、JICAの第三国研修制度を通して地域共同体警察のノウハウを広める計画が検討中だ▼治安問題は第三世界全体の問題であり、へたな経済支援よりもその国の住民から感謝されることは間違いない。日本方式をブラジルの外交力で世界に広げているのはデジタルTVだけではない▼しかし根本的には社会格差を縮めないと犯罪自体が減らない。警察力だけでは限界がある。日本は戦後、一億総中産階級を実現し、世界一格差の少ない社会を作った。当の日本人は「横並び社会」などと得意の自己過小評価をしていたが、世界の現実からすれば、それはまさにみなが望む奇跡だった。(深)

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