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大相撲=春場所中止でコロニアも落胆=八百長問題「国技でまさか」=「若者の夢うばわないで」=早期の場所再開に期待

ニッケイ新聞 2011年2月11日付け

 八百長問題の急浮上で春場所中止にまで追い込まれた日本相撲協会。10日現在、八百長の実態解明の調査が行われている。NHKの衛星放送を楽しみにするブラジル在住者は多く、その波紋は日系コロニアまで広がっている。また、同場所は魁聖(ブラジル)の南米出身力士初の入幕が期待されていた。「寄付を募り、化粧まわしを贈るつもりだったのに・・」(篭原功ブラジル相撲連盟会長)と、中止による関係者、ファンの落胆は大きい。体質の改善を願い、早期の場所の再開を願う声が各地から聞かれた。

 『若東』のしこ名で十両まで昇進した黒田吉信さんは相撲界の八百長疑惑について、「そんな話は聞いたことはない。自分にも話は来たことがない」と明言。
 「そういう(八百長をする)奴もいるんだな。皆ガッカリしている」と述べ、「何より魁聖の入幕を期待していたから残念。せっかくテレビで見ることができると思ったのに。早く場所ができるようにしてほしい」と先輩力士として心境を語った。NHKでは幕内の取り組みしか放送されておらず、晴れの姿が写し出されるのが待望されていた。
 篭原会長は入幕が目前となった魁聖について、「1月30日の総会で化粧まわしを送ることが決まっていたのに」と声を落とす。場所の中止を受け、様子をみて寄付を募るつもりだという。
 また、「こちらからは何もできないが、(ブラジルには)日本を目指す若手もいる。夢である日本の相撲がしっかりしてもらわないと」と願う気持ちだ。
 早朝5時から放送される取り組みを「欠かさず見る」という山岸清吉さん(82、サンパウロ市)。今回の問題について、「相撲は国技。国技でまさかそんな事(八百長)があったのがショックで残念。しかし、春(場所)は駄目でも、夏はやっていいと思う。その為にも(相撲界が)良くなってもらわないと」とファンの心境を語った。
 北伯パラー州ベレン在住の下小薗昭仁さん(本紙通信員)によれば、同地のある相撲好きの集まりで、70歳代の一世たちから「(場所の中止は)やりすぎではないか。関係者の処罰、ファンへの謝罪だけでいいのでは。騒ぐことではない」との声も多いという。
 下小薗さんはまた、「八百長という言葉自体が相撲から出た言葉。昔からあったこと。しかし、それは相手に勝ち星をやる、という人情的な八百長であって、今はお金が絡んだことで、あそこまで露骨に出たら嫌になる」と自身も長年のファンの一人として今回の事件を見る。
 サンパウロ州ユバ農場の磯部亮一さん(41)は、続く相撲界の不祥事と比べ「今回は土俵の中の事」と問題の違いを話す。取り組みは相撲の根幹をなすもの、そこでの不祥事にショックも大きい。
 「今までの甘い体制からの変化が見えるようにしてほしい。どのように変わってくれるかが楽しみ。5月には取り組みが見たい」と、ファンの相撲への思いは強く、体質改善と早期の場所の再開を心待ちにしている。

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