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ブラジルは世界経済の重要なプレーヤー=商議所シンポ=大和総研武藤理事長が講演=日伯の補完関係強化を

ニッケイ新聞 2011年2月19日付け

 財務省事務次官、日本銀行副総裁を歴任した武藤敏郎・大和総研理事長が初来伯し、15日午後、ブラジル日本商工会議所業種別部会長シンポジュームで「ブラジルと日本の経済関係の展望」をテーマに講演した。ブラジリアで財務省、中央銀行関係者などと意見交換も行った武藤氏は、今回の訪問を通じ、「ブラジルがこれから重要な世界経済のプレーヤーになると確信した」と述べた。

 冒頭、BRICs(伯、露、印、中)と呼ばれる新興国の中でも、ブラジルは洗練された民主主義が根づいていると印象を語り、さらに鉱物、食糧、環境、生物など「多様性をもった資源国」と位置づけた。
 日伯関係100年の歴史に触れ、「このような信頼関係がある国は日本から見てブラジルだけ」とし、一層の関係深化に期待を表明。日本側のブラジルへの理解も、これまでの資源大国という見方から、消費市場、グローバルな政策拠点として捉えられるようになっているという。さらに深海油田、航空機、バイオ燃料などの高い技術があることも挙げ、関係強化の必要性を強調した。
 その後は、高い成長が続くブラジルの参考にと、日本の高度成長の歴史を概観した。
 1945年の敗戦から23年後の68年にGDP世界第2位へと復興した戦後の日本経済。五輪、万博などを経て、実質的な完全雇用、国民の9割が中流意識を持つ社会を達成した。武藤氏は66年に旧大蔵省に入省した当時、「日本の勢いは今のブラジルのようだった」と振り返る。
 石油危機を経て安定成長に入ったが、85年のプラザ合意、続くバブル経済と崩壊の後、連続的なデフレ状態が続く「失われた20年」へ。
 武藤氏は高度成長期の負の側面にも目を向ける必要があるとし、1次産業の空洞化による農村部の人口減少と都市の過密化、公害、製造業の海外移転、少子高齢化など日本の歩みを紹介。
 特に少子高齢化は、40年後のブラジルが現在の日本のレベルの高齢化社会になると予測し、社会保険の問題を頭に入れる必要があるとした。また、日本が省エネ技術によってエネルギー消費量を下げてきたように、ブラジルも将来的には省エネが課題になるだろうと述べた。
 最後に武藤氏は、先進国と新興国のGDPシェアの差が縮まり、世界経済の中心がG7からG20に移りつつある中でブラジルが果たす役割が重要になると発言。今後の日伯関係について、日本の高度な技術とブラジルの資源、労働力が結びつくことの重要性に触れ、「両国の補完的関係が世界経済に貢献できると思う」と述べた。

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