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中村勉の時事随筆=11年2月21日=時々お温習を(下)

ニッケイ新聞 2011年2月25日付け

 貿易依存度:よく誤解され、日本の貿易依存度は高いと思われているが、実際は、日本の貿易依存度は31・7%、2008年と低い。日本より低いのは、ブラジル(24・1%)と米国(24・3%)位で、例えば中国は59・2%、印度38・3%、ロシア46・9%だ。言うまでもなく、世界が保護主義に陥った時に困る度合は貿易依存度の高いほど厳しい。海外依存の小さい日本が困るという論拠はみつからない。
 又、「自国民は頼れるが、外国人は頼れない」と信じている人は多いが、案外「近い親戚より遠い友人」の方が頼りになるかも知れない。ブラジルは、水に恵まれ、農地可能面積が大きく、平和を愛好し、政治が比較的安定している民主主義国家、日本との間に紛争問題もなく、1〜2百万人の日系人を擁している。ブラジルは日本が友とすべき条件に恵まれた類稀な国、仲良くすべきだ。
 空洞化論:定義はハッキリしないが、「製造業は、日本の生産コスト(税金等)が割高、或いは国内市場が縮小すると見たら、有利な海外に出て行き、日本経済は空洞化する」その結果、「国内の雇用が減り、日本経済は衰退していく」という議論と理解している。事実、BRICsへの企業進出は顕著だ(製造業の海外生産比率:4・6% 1990年度→17・8% 2009年度)。それに伴い、海外直接投資の収益も増大している。IMFの資料によると、日本は19年連続で世界最大の対外純資産国だ(2009年末で266兆円)。その純受取額も、GDPの3%、企業の経常利益の12%に達している(資本金10億円超の大企業の経常利益を分母にとれば24%)−日経「経済教室」30/08/2010。即ち、所謂「空洞化」した分だけ海外の資産が増え、その資産が稼ぐ利益は日本に還元されているわけだ。
 海外の現地法人も雇用を創出していることは言うまでもない。企業が、海外と国内とを問わず、生き残っていく限り、雇用は必要だ。逆に、国内に留まっても、死んで(倒産)しまえば、雇用は不要になる。「空洞化=雇用減」論は短絡し過ぎだ。今や日本企業は生産額の2割を海外で生産していると言われる時代、心を開き、偏見を越えようではないか。
 ブラジルもレアル高で、レアル安を求める声を聞くが、ブラジル経済の将来の為に技術輸入を重視するなら、輸出振興を理由にレアル安操作をする愚をおかしてはならない。日本の経験は、市場に任せた為替は成功、保護した農政(米)は失敗だった、と教えている。

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