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イビウナ庵便り=中村勉の時事随筆=11年5月23日=原発賛否論考

ニッケイ新聞 2011年5月25日付け

 約半世紀、原発推進論と反対論は鋭く対立してきた。今回の福島第1原発事故以来その対立は益々厳しくなった。昔「芋と裸足」論争があったが、現在も当時と変わらない。推進論者が「原発をやらなければ、行き着く処は『芋と裸足』の生活になるぞ、それでもよいのか?」と言えば、反対論者は「止むを得ない、人類滅亡よりましだ」と応じた。2005年佐賀で行われた東大大学院の大橋弘忠教授(推進派)と、京大原子炉実験所の小出裕章助教(反対派)のパネルディスカッションで、推進派が、信じ難いことだが、「格納容器は壊れないしプルトニュムは飲んでも大丈夫」と発言している動画が送られてきたが、「芋と裸足」論争と同様、売り言葉に買い言葉の類と思った。今回3.11以降、原発推進派の大学教授(科学者)が希望的観測で世を惑わすことも学んだ。
 3.11以降WN(原発反対の立場)は、原発推進の方々から様々のコメントを頂いた。事故は進行形であり、その終息には気の遠くなる程の時間を要する予想もある故、この辺で、今後の議論の為に最初の中間的な論点整理をしておきたい。
1. 原発に代わるエネルギー源を提示しない原発反対論は無責任だ。太陽光、風力、地熱、バイオ、など自然エネルギーはいずれも弱いエネルギー源で原子力の代替にならない。(WN:原発推進イコール自然エネルギー反対でない筈、化石燃料、即ち、石炭、石油、天然ガスを含めベスト・ミックスとエネルギー源の多様化を追求すべきだ。)
2. 原子力はコスト的に他のエネルギーに比べ割安で、代替できない。仏(原発依存)と独・伊(原発反対)の現状を直視せよ。仏<独の電力コスト差は6割に達し、伊の停電多発の教訓に学ぶべきだ。(WN:市場で試されたことのないコスト比較は無意味。今回のフクシマ・コストと将来の原発保険料率を計算した原子エネルギーが市場でフェア競争してきまる。早急に電力市場の自由化を促進すべきだ。)
3. フクシマI以外の原発が被害ない事実はむしろ原発の安全を証明した。(WN;「生きてこそ」の議論を抜きにしたエネルギー論争は本末転倒の誹りを免れまい。同じ災害地域で、何故フクシマIが事故を起こし、福島原発IIと女川原発は事故を起こさないで済んだのか、早急に調査し、その結果を公表すべきだ。)
4. 日本が脱原発してもBRICSはじめ後進国は原発を推進する筈で、世界の原発炉数は増え続ける。原発先進国の日本は、脱原発より原発推進で安全向上技術に於いて世界に貢献すべきだ。(WN:推進にしても、小型炉と事故処理ロボットの開発を待って、地産地消費型=リスクの受益者負担で推進すべきだ。)
5. 節電に生活スタイルを変えろと言っても、一度味わった豊かな生活は忘れられず、短期間で旧の木阿彌になる。節電効果は期待薄い。(WN:快適なSimple Lifeを味わうよい機会、根づく筈、日本の文化革命として推し進めるべき。又、安全を求めて企業の海外移転が進み、結果的には電力需要は減少する筈。)

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