ホーム | 日系社会ニュース | 高知新聞百周年連載『南へ』=聴く移住史、音声版CD完成=富尾記者が県人会へ寄贈

高知新聞百周年連載『南へ』=聴く移住史、音声版CD完成=富尾記者が県人会へ寄贈

ニッケイ新聞 2011年7月7日付け

 南米に渡った高知県出身の移民の軌跡を綴った書籍『南へ 高知県人中南米移住100年』(高知新聞社刊)の音声版CDが制作されたとして、取材と本書の執筆を手がけた高知新聞社会部の富尾和方記者(37、徳島)が1日に来伯、高知県人会の片山アルナルド会長に手渡した。
 『南へ』は約180ページで5部構成。08年1月〜09年3月まで、高知新聞の1面で連載されていた記事を書籍化したもので、高知新聞創刊105周年を記念し、09年12月に刊行された。
 富尾さんは95〜6年、本紙の前身「日伯毎日新聞」元研修生。07年11月に来伯し、08年9月に帰国するまでブラジルをはじめ、パラグアイやアルゼンチンの高知県人移住者を取材。帰伯デカセギ県人子孫や留守家族に加え、帰国後も日本にいる県人子孫などを追加取材した。
 音声CD制作に至った経緯を、「戦後まもなく県を離れた移住者は高齢。また、日本語の会話は出来ても漢字を読めない日系人も多いため、音声版を望む声が上がっていた」と説明。
 この話を聞いた、高知県出身の〃ブラジル移民の父〃水野龍の顕彰活動を行なう「佐川町・水野ブラジル協会」の嶋崎京子さんが、元高知放送アナウンサーの塩田正興さんに協力を依頼、塩田さんのほか同局元アナウンサーの渡辺護さん、秋山陽子さんの3人がボランティアでの音声収録に取り組んだ。5日がかりで約6時間に及ぶ作業だったという。
 CDは1枚50分程度で、7枚1組。県立図書館、高知市民図書館、土佐市立図書館などに寄贈されている。
 富尾さんは、「プロの朗読なので良い出来栄え。県系人はもちろん、他県の人や日系人が、移民の歴史を知る手がかりになれば」と自信を見せ、片山会長は「音声版は初めての試みでは。県人会で役立てます」と喜んでいた。
 CDは富尾さんによってアルゼンチン、パラグアイの各県人会に加え、文協にも1部寄贈された。

image_print