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「老いたる開拓者の歌」=懐かしの歌詞を掲載

ニッケイ新聞 2011年7月9日付け

 「ここはお国を何百里〜」という軍歌「戦友」はあまねく愛唱されたが、そのコロニア版替え歌「老いたる開拓者の歌」(アリアンサ、萩原彦四郎作)の歌詞が雑誌『曠野の星』(第28号、60頁)で、この度見つかった。かつて一部の植民地ではよく歌われていたらしく、「ぜひ掲載を」との声が読者から寄せられたため、載せることになった。22番までの歌詞を辿ると初期移民の苦労が行間によくきざみこまれており、涙なしには歌えないとの声もある。同船者会や植民地出身者懇談会の折などに、ぜひ声に出して歌ってみて欲しい。(編集部)

(1)此処はお国を何万里 はなれて遠きブラジルの 赤い夕日に照らされて 友は野末の石の下
(2)思えば悲し昨日まで 真っ先かけて村のため 骨身惜しまずつくしたる 友は此処に眠れるか
(3)ああ開拓の最中に 隣に居りし我が友の 俄かにはたと倒れしを 我は思わずかけよりて
(4)かねて覚悟の前なれど これが見捨てて置かれよか しっかりせよと抱き起こし 仮りの手当も森の中
(5)おりから渡る雁の声 友はようよう顔あげて 我が亡がらを踏み越えて 進みくれよと目に涙
(6)痛手はかるいよその内に 笑いながらに手を取りて やろうよやるよと答えたが 長の別れとなったのか
(7)心ばかりははやれども 人里はなれし森の中 みとりのすべもかいなきや も一度立てよと願うたに
(8)空しく冷えて魂は 天に昇りてもの言わず 無心に梢を飛びかわす 野猿の叫びもうら悲し
(9)思えば昔船出して お国が見えなくなった時 玄界灘で手を握り 名乗り合いしが始めにて
(10)それから後は一本の タバコも二人で分けてのみ いまだ見ぬ国に打ち立てん 若きのぞみを語り合い
(11)肩をたたいて口ぐせに 椰子の下こそ我が墓ぞ 死んだら骨を頼むよと 言いかわしたる二人仲
(12)思いもよらず我れ一人 不思議に命ながらえて 赤い夕日のブラジルに 友の塚穴掘ろうとは
(13)うるむまなこに見つむれば 仮りの友の名記したる 墓標の墨の香新しく すだく虫の音あわれなり
(14)春去り夏すぎ秋もゆき 幾度花は開けども 天に昇りし我が友は 再びこの世に帰らじな
(15)移り来たりて三十年 斧鉞(ふえつ)を知らぬこの里も 今や緑も消えうせて ただ一色の枯れ野原
(16)緑と共になごやめる 人の心も消えうせて 正しきものは吹きすさぶ 嵐の中に沈みゆく
(17)人は再びカナンの地 求めて去るや西東 我も遅れじ思えども 老いたるこの身をいかにせん
(18)腰に張りたる梓弓(あづさゆみ) 頭に頂く朝の霜 心矢竹にはやるのみ むなしく望む大麻州
(19)そのかみ異国の歌人が 幸い求めてはるばると 尋ね尋ねて涙ぐみ 帰りし言の葉思い出ず
(20)いつまで追わんか青い鳥 いずこにあるや青い鳥 長い旅路をふりかえりゃ 瞼に浮かぶは老いし母
(21)恋しやふるさとそもいかに 裏の小川に鳥の声 鎮守の森もそのままか 夢路にたどるはくにの空
(22)ああ青春は今いずこ 荒れ古(ふ)る家に我児(あこ)を待つ 夢にも忘れぬ母思い おもわず落とす一しずく

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