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人文研=若手研究員の育成に着々=奨学生論文集を刊行

ニッケイ新聞 2011年9月10日付け

 サンパウロ人文科学研究所(人文研、本山省三理事長)が一昨年10月から実施する『若手研究員養成のための奨学制度』の第一期奨学生4人による論文集が刊行された。ポ語のみ。
 サンヨー牧場、宮坂基金、続木善夫、高岡マルセロ両氏らの協力で、毎月一最低給料が支給される。指導教官はサンパウロ総合大学(USP)歴史学科教授の本山理事長、同大社会学博士の菊地マリオ保夫副理事長。
 第一期奨学生は、小林ブルーナ、山田エドワルドさん、吉田満さん、柴田夏美さんの4人で、来年3月までの予定。
 吉田さん(32、三世)がテーマに選んだのは、「日本の対伯移民開始までの歴史的経緯—江戸時代の封建制度の特性をめぐって」。明治時代に始まった移民政策は江戸時代の封建制度に端を発するのではないかという仮説を立てた。
 二世の父、非日系の母を持ち、大学で日本史を学ぶ。日本語の文献を読むことができないため、翻訳を頼んだり、数少ない英語やポ語の文献を手に取り組んだ。
 「ブラジルの学校で教わるのは西洋史だけで、東洋史を知る機会がない」と話し、「移民がブラジルに着いてからの歴史は比較的知られているものの、どのように日本移民がブラジルにたどり着いたのかに興味があった」と語り、今後の研究にも意欲を見せていた。
 本山理事長は、「USP歴史科には日本史専修がない。興味を持つ人が増えてきているので、将来的に創設されることを願う」と話している。
 論文集は300部印刷され、各研究機関に配布される。

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