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和歌山県=民間団体が交流に力こぶ=派遣交流事業を加速化=松原移民の資料収集も

ニッケイ新聞 2011年10月6日付け

 補助金の削減により母県との交流事業が停滞する県人会が多いなか、和歌山県では今、県の外郭団体や民間団体が中心となり、日伯青少年交流事業に積極的な取り組みを始めている。8月30日から約2週間、財団法人国際交流協会の亀井勝博事務局次長、伊藤千夏さん、国立和歌山大学の東悦子教授、中南米交流協会の迫間修代表が来伯した。同県からの移住者が多い松原植民地から75キロ離れた南麻州ドウラードス市を訪問、移民資料の収集のほか、新たな交流事業も決定した。

 08年に県費留学・研修生制度が中止となったのは、費用の半額を負担していた国の補助金が打ち切られたことによる。
 講演会やイベントを通して地域住民に国際交流の機会を提供する活動を行なう国際交流協会は、おりしも派遣交流事業を進めており、「時期的にちょうどよかった」と亀井事務局次長は話す。
 同協会は元々県が設立したが、後に財団法人化した。寄付金や県外郭団体からの助成金を運用、活動資金に充てている。
 今回3回目の交流事業の目的は、「海外に住む日系青少年らにホームステイを通して日本の冬、特に正月の家庭生活や習慣を体験してもらうこと」(亀井事務局長)だという。
 今年派遣されるのは、藪田ルーカス(19、バストス)、高木ターレスさん(19、カンポグランデ)の二人。12月中旬から3週間滞在、ホームステイや同世代の青年との交流などを行なう。
 中南米交流協会の迫間代表は、「子供たちに昔の特徴を残したブラジルの日本社会を体験させたい」と語る。
 かつて永住を希望し、ブラジルに1年間住んだだけあり思い入れは強い。55周年式典では民間に呼びかけ、16人を引率した。「60周年にも参加者を募るつもり」と意欲を見せている。
 こうした自主的な活動が評価され、県から「交流事業に協力してほしい」との要請があった。
 中南米諸国との民間交流窓口になること、また県人移住の資料収集などを目的に08年、同協会が設立されている。会員数は約100人。
 今回も迫間さんが現地コーディネーターとなり、松原植民地を訪問し、東教授が中心となってアンケートや聞き取り調査を実施した。同市の子供たちに移民の歴史を伝える教材に利用されるという。
 今回の訪問では、次回からドウラードス市から1人、和歌山大学から同市最大4人が派遣されることが決まるなどの成果を上げている。
 木原会長は「こうした取り組みは有難い」としながらも、「協会の活動対象は中南米全体。継続のためには、ブラジル側も派遣費用の自己負担も検討する必要がある」と話している。

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