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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年10月20日付け

 「ヨーロッパ系移民は植民地にまず教会を建て、日本移民は学校を建てる」。日本人の教育熱心さを示す話として幾度となく紹介されてきた。USPへの日系人の進学率の高さはよく知られるし、百周年でブラジルメディアに取材を受けた戦前二世らも、親の教育に感謝の言葉を述べていた▼一方、コロニアの担い手はこうした人々ではない。地方に行けばそれは顕著だ。もちろん一概には言えない。だが兄弟のなかでも出聖して大学まで出ると家を離れてしまう例が多く、家業を継ぎ、親の面倒を見ている兄弟が地元日系団体の重要メンバーだったりする▼今月16日にあったスザノ日本人入植90式典の記事(18日付け本紙7面)で汎スザノ日伯文化体育農事協会(ACEAS)の森和弘会長のあいさつ、「日伯学園を〃核〃に地元コロニアを盛り上げたい」を興味深く読んだ。ACEASは90年代に会員が減少、危機的状況に陥った。そのため二、三世が中心になりクラブ化を図ったが、学校経営のため協会に戻し、06年の創立に向け奔走した▼当時の会長だった上野ジョルジ氏によれば、「生徒、父兄らの協力でACEAS自体の活動が活発化している」という。借家栄えて母屋もーといったところか。日系の看板に魅せられ、入学する非日系生徒も多く、その割合は逆転している▼初期移民らの建学精神をコロニアの担い手たちが受け継ぎ、百周年でエリート二世らが唱えた〃統合〃が教育を取り巻く環境のなかで進んでいる。イタリアやドイツ系のような学園構想は潰えたが、根をしっかり生やした学び舎のさらなる充実を願いたい。(剛)

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