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サンタクルス病院=負債減らし経営効率化へ=中矢理事長に真相聞く=プラザッキ売却の真偽は=「7人の有志」毎週会議

ニッケイ新聞 2011年11月23日付け

 サンタクルス病院に関して「PLASAC(プラザッキ)を売却する」「負債が増えている」などの噂が巷に広まっているが実際はどうなのか。同病院の医師団からの質問状を受けた後、昨年9月に突然、病院を運営するサンタクルス日伯慈善協会の菜切健児理事長が辞任を発表してコロニアを驚かせた。その後、現在の中矢レナット氏が引き継いで以来、どのような状態になっているのか。21日夜に臨時総会が開かれた機会に、現状に関する正確な情報を中矢理事長らに確かめてみた。

 中矢理事長はまず「我々は前向きに取り組んでいる。いま経営は完全に管理されている。9カ月前の負債は3200万レアルだったが、現在は3千万レアルに縮小した。今後1年間のうちには更に2割減らしたい」との展望を語った。本紙昨年9月24日付け記事よれば、同8月の負債は2600万レアル。中矢理事長就任後も増え、9カ月前に頭打ちし、減少に向かったようだ。
 3千万レアルという負債は経営規模と比較するとどのくらい大きいのかと理事長に問うと、「今年1年間の収支は1億3千万レアル。前年比15%増だから、負債の規模はそれほど大きいものではない」と説明した。
 中矢体制になってからの内部変化の象徴は、3カ月前から「7人のボランティア有志」が毎週会議を開き、理事長の意向を実行すべく粉骨砕身していること。その一人、日本料理界の有名シェフ・坂本淳さんは「手伝うようになって感じたがすごく良い病院だ。外部のあちこちで賞賛を受けている」と胸をはる。他に医療保険専門の平井パウロさん、理事の伊藤カルロス医師らも手伝う。
 従来21人の理事が運営を担ってきたが月1回の会議に集まるのみで、企業経営者である中矢理事長からすると動きが遅く感じられ、「7人の有志」体制を作った。10月からはアダチ・ハルオ・カルロス新院長が就任し、病院全体の支出を減らし、コンピューター化を進めている。
 件の医師団代表には先週の会議から出席してもらい、直接お互いの意見をやり取りする関係を築きはじめた。「僕らは火花を散らしあってはいけない」と考え、以前の体制とは違う関係を作りつつあることを強調する。医師を中心とした人間関係が病院の屋台骨にある以上、昨年のような衝突は状況を混迷に導く。
 プラザッキ売却の噂を確かめると、「それに関する交渉の申込みがあることは確か。でも、あくまで検討中でしかない。我々が条件として交渉相手に提示しているのは、売却されてもプラザッキ加入者は当病院を使えること」と明言した。
 現在のプラザッキ契約者は9500人だが、一般的な基準からすれば10万人規模でないと医療保険の経営は安定しないという。「高齢者の比率が高いプラザッキは病院経営の負担になっているとの話があるが」と尋ねると否定はしなかった。
 チェックアップ管理者の藤村ゆりさんは、「由緒ある旧日本病院ですから、ぜひコムニダーデの理解をお願いしたい。慈善協会の会員になって我々を後押ししてください」と呼びかけた。同慈善協会の年会費は120レアル、総会などで投票権が与えられる。約1千人会員がいるが会費を完納しているのは400人程度という。中矢体制になり、経営改善の歯車は動き出しているようだ。

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