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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年1月20日付け

 13日付け本欄で《「加害者は自分の身を守るためにウソをつくことが許されています。不利な証拠は隠しても罪にならないのです」との説明を読んで、目からウロコの心境だった》と書いた。原文となった弁護士の記事には「ただし、証人は嘘をつくことは許されていません。ばれると刑務所行きです」ともあった▼それに対し、ある読者から「被告のウソが許されるハズがない。証人は法廷でウソをつくと有罪だとある。証人と被告人のウソが同罪にはならない、というところに一般的な見解から疑問を感じました」とのメールをもらい、別の専門家(大学法学部教授)にも見解を尋ねてみた▼やはり、「ブラジル法の下では被告は、何を言っても良いことになっていて、嘘をついたからと言って、特別な処罰を受けるわけではありません。但し、嘘をついたことが発覚した場合、自らの無実を立証することが困難となり、求刑通りの判決が下されることになります」と説明する。さらに「被告が刑を宣告される前に発言を訂正、または撤回すれば、処罰の対象とはならなくなります」とも▼分かりやすく言えば「バレなければいい」という考え方と言えそうだ。自分が有利になるようなウソをつきとおし、いざバレそうになったら判決前に謝れば許される——ということらしい▼件の専門家は「真実のみを述べることを宣誓させる日本やアメリカの場合とまったく異なります。アメリカでは特にそうですが、法廷で嘘をつくことは重罪です」と興味深い比較をした。つまり、ブラジルの法と日米などとは根本的に違うわけだ。その間に横たわる溝は長いため息が出るほど深い。(深)

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