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在聖総領事館=個人情報、どこまで適用?=親族探しに〃非情〃な対応=「日本の外務省を通して」=怒り心頭の野口伊勢蔵さん

ニッケイ新聞 2012年2月18日付け

 「戸籍謄本持参で家族と証明したのに、規則だから、の一点張りだった」と在聖総領事館に怒りを隠さないのは、来伯して親族を探す野口伊勢蔵さん(59)。少年時代に家族でブラジル移住、23歳で帰国。再び移住を考え、現在もサンパウロに住んでいると思われる姉妹を探している(本紙2月3日付)。十数年前に一度訪ねたが、連絡先を紛失した。総領事館で事情を説明したところ、妹、英子さんの在留届がありながら「外務省に許可を得ないと『個人情報』である連絡先は教えられない」との〃非情〃な対応を受けた。「親族なのに何故」——。今も姉妹を探す野口さんの憤りは収まらない。

 「かなりきつい口調で申し立てたんですが、どうしても公開できないという。手紙なら出せると言われたが、頭に来てそれも頼んでこなかった」
 十数年前に再会したさいには、姉セツコさんは結婚して家を出ていたが、英子さんは父保一さん(故人)とリベルダーデに住んでいたという。
 「住所が分かるなら出向くのに…。新聞で呼びかけても連絡がないということは、もうこの世にいないんでしょうかね」と声を落とす。
 邦人保護班の鎌倉由明領事によれば「海外に住む邦人調査は、日本の外務省に『所在調査』願いを出す必要がある」という。
 在外公館は外務省からの指示を受ける形で、在留届や日本人会、日系人団体の会員名簿などにあたる。
 そのため在外公館に直接依頼があった場合でも、外務省に伝え、指示を仰ぐのが〃原則〃だという。
 調査の結果、被調査人の所在が判明した場合でも、被調査人の承諾がなければ、依頼人に所在の有無や住所などを伝えることはない。これは親族であっても「個人情報保護」の観点からの規則だ。
 他の国や地域と違い、サンパウロは移民が多く、生き別れになるようなケースは少なくはないはず。今まではどうだったのか。
 「基本的には規則に沿って対応してきた。お役所仕事なので、規則にがんじがらめなんです」と鎌倉領事。一方で、本当は良くないのですが—と前置きしつつ「依頼人が非常に困っていたり、かなりの高齢であったりする場合は、状況を見て領事館で調べることもあります」とも。
 手紙や電話で連絡し、被調査人の承諾を得た上で依頼人に伝えたケースも実際にあったという。
 「ただ、移住者の場合は最初に在留届を出したきりで、転居した場合も届出を出さない人も多い。領事館より県人会に聞いた方が良い場合もあるのでは」
 家族それぞれの問題もある。親族だからといって連絡先を安易に伝えることは避けるべきだろう。ただ、当地まで家族を探しに来ている人間に対して、もっと血の通った対応を求めるのは土台無理なのだろうか。

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