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商議所部会長シンポ=不透明感に細やかな対応を=(上)=今年も好調持続の基調か=欧州危機と減速動向に注意

ニッケイ新聞 2012年2月23日付け

 ブラジル日本商工会議所(伊藤友久=総務委員長、澤田吉啓企画戦略委員長)が主催する2012年上期「業種別部会長シンポジウム」が14日午後、サンパウロ市内ホテルで開催され、過去最多の170人あまりが出席し、11の各部会から簡略に説明した業界動向に熱心に聞き入った。東京の国際公共政策研究所からは田中直毅理事長をはじめ3人、ブラジリアの日本国大使館からは6人が駆けつけた。大部一秋在聖総領事は最後の講評で、「田中直毅先生がこのシンポの日程に合わせて来伯されるなど、サンパウロだけのイベントではなくなっている。会員企業の75%は経済好調と感じているが、25%は不透明感を感じている。若干、複雑な様相に推移しており、きめの細やかな対応が必要になってきている」と総括した。

 減速だがバブルではない

 金融部会の遠藤秀憲部会長(南米安田保険)は昨年の経済情勢を回顧して、前半は経済過熱やインフレ懸念から基本金利引上げが基調だった。ところが欧州危機の勃発を予測したような見事なタイミングでブラジル金融当局は8月末に電撃的に基本金利を引き下げ、それから先は景気減速気運をゆるめるために国内産業重視(輸入車などへのIPI税引上げ)方針を強め、成長を維持するアクセルを踏むために最低賃金の引上げなどの手を打ってきた。
 昨年のインフレ率は6・5%と政府目標の上限ギリギリだが、失業率は4・7%と歴史的な低水準となった。第3四半期がゼロ成長を記録したとはいえ、年間GDP成長率は3%となっており、景気は〃減速〃ていどだと見られている。「サンパウロ市、リオの不動産は価格高騰しているが、融資残高を見る限り、まだバブルではない」との分析も加えた。
 12年の展望は「緩やかな回復軌道へ」とみており、11年よりもインフレは安定し、年末に向けて基本金利は9・5%程度まで引き下げられ、年GDP成長率は3・5%程度と見ている。

 二桁成長から5%成長へ

 自動車部会の末一義(すえ・かずよし)部会長代理(ホンダ)は、11年の販売台数は363万3千台で、前年比103・4%増の過去最高を記録したと報告した。
 昨年12月にブラジル政府がIPI税率を変更してメルコスル現地調達率65%以上の「国産車」を保護する政策を強めたため、完成車を輸入する韓国勢・中国勢の価格が上がるなどの影響が今年から現れる予想だという。
 10年までは二桁成長だったが、12年の国内市場は381万台と予測され、今後は5%程度の〃安定成長〃になるとの見方が広がっており、「拡大ペースは鈍化したが、まだ過去最高販売は続く」と見ている

 成長する北部、北東部

 二輪車の11年の生産は213万7千台(前年比116・8%増)で、08年の金融危機以前のレベルまで回復した。特に北東部は南西部(サンパウロ州など)に並ぶ登録台数を記録するまでの大市場に成長した。また同様に低所得地域と見られていた北部も市場拡大が顕著となっている。
 電気電子部会の篠原一宇(いちう)部会長(パナソニック)は、「80年代のテレビ市場は200万台、現在は140万台と7倍の規模になった」と比較し、洗濯機市場も拡大していることを分析し、「共稼ぎが増えるなどの社会構造の変化が家電市場に反映している」とのべた。12年の展望では「GDP成長は鈍化するも、C層のさらなる拡大で、個人消費はいぜん堅調に推移する」と見ている。

写真=部会長らシンポの関係者のみなさん(前列左から4人目が田中理事長、その右が近藤会頭)

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