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危機後に在日ブラジル人労働者増?=過去10年で約2・3倍に

ニッケイ新聞 2012年3月1日付け

 多くの外国人が失業の憂き目に遭ったリーマン・ショックから4年。不安定な雇用環境に置かれ、2007年には約31万人以上に達していた登録ブラジル人数は急激に落ち込み、11年9月の統計では21万32人を記録した。
 一方、厚生労働省が実施する外国人雇用統計では、在日ブラジル人の雇用者数は02年から10年間で5万428人から11万6839人と約2・3倍に上昇した。統計の意味するところは何なのか—在聖総領事館の坪井俊宣領事に意見を聞いた。
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 静岡新聞1月28日付けにも「外国労働者5・6%増、11年10月、一時減から回復」との記事が掲載された。厚生労働省が発表した同統計では前年同期比で5・6%増加と報じている。
 しかし、金融危機と大震災を受けて在日ブラジル人はこの4年で10万人も激減しているのに「労働者は増えている」のはなぜか。
 これに対し、坪井領事は「07年の雇用対策法改正を受け、08年に外国人の雇用状況の届け出が義務化されたことが大きい」と法改正の周知が進んだことを主な理由として説明した。
 言葉を変えれば、08年以前の統計結果は実態が反映された数字ではなく、今の数字が現状に近いようだ。
 「届出が十分になされてなかった可能性もあり、実態を反映していたとはいえない。資料に現れる数字はあくまで届出状況」と強調し「届出促進により実態把握が進み、数値と実態が近づいてきているのが現状だと思う」と述べた。
 在日ブラジル人雇用者数が急激な増加を見せたのは08年。02〜07年までは、5万人台を推移していたが、08年に9万9179人と約2倍に膨れ上がった。
 同省は外国人集住地域のハローワークで外国人求職者に対する相談・支援を強化させているが、こうした就労支援との外国人労働者数増加との関係性は明らかではないという。
 また統計に表れる興味深いもう一つの点として、派遣・請負業に携わる在日ブラジル人の割合が08年からの4年間で、71%から59%へと減少した。これは直接雇用率の増加を示唆していると見られる。
 坪井領事は「一時的な定住者が減少し、永住者が増加している。デカセギ全体が減っている影響で、請負や派遣に携わる人の割合も減りつつある感触がある」と話した。
 また日本社会全体の状況として「同省外国人雇用対策課によれば、製造業を中心に需要が増えつつあり、今後も伸びていく可能性がある」と市場回復の兆しがあることを伺わせた。

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