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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年3月7日付け

 「豊水を出荷しました」。今年もサンタカタリーナ州のラモス移住地から「秋の訪れ」を告げる便りが届いた。今年の夏は特に暑かっただけに、豊水を2時間ほど冷蔵庫で冷やし、名前どおりの水分タップリの爽やかな甘みをシャリッという音を楽しみながら頂くのは、まさに至福だ。日本の紅葉の風景が脳裏に浮かぶ▼梨の成分の9割は水分で、りんご酸やクエン酸などの酸味が含まれており、歯ごたえをもたらす繊維が便秘予防に役立ち、疲労回復に良いとか。甘み成分である果糖は血糖値が上がりにくい食品で、糖尿病の食事療法にも使われている。成分のカリウムが体内のナトリウムを排出する作用があるので、高血圧予防にも良いとか。梨の〝機能性〟は立派なものだ▼気になる今年の出来は「雨が少なかったので、普通作か小さめ」という。先月中に収穫を終え、保冷されたものが今月いっぱい出荷される。「今年の天候はあまり良くなかったが、出来栄えのいい豊水が収穫できたのはJICA研修の成果だと喜んでいます」との声を聞いた▼08年に5人、10年に4人、11年には2人が訪日研修に行き、梨生産者、試験場、大学農学部で学んできた。将来の移住地観光農村化をにらんで特産品加工をして土産にするアイデアなどを温めているとか▼今年グァタパラ移住地やピニャール移住地などが半世紀の節目を迎える。ラモス創立はその2年後で、いわば最後発で規模的にも小さい。「瓢箪から駒」との言葉からとって移住地のシンボルにしたと聞いたが、ジョビン国防大臣や斎藤空軍総司令官が梨を食べに訪れるなどの存在感は独特で、むしろ「実力」だと感じる。(深)

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