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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年3月13日付け

 生活保護の受給者が205万人を突破し、戦後最大の記録となったの報道があり、日本の不景気は深刻だな—の思いを強くする。ドル安と急激な円高で自動車や鉄鋼などの輸出産業は悲鳴を上げ、長期デフレで小売りもぱっとしない。日本銀行は金融政策を緩和し、景気引き上げに全力投球し、政府も支援策を打ち出しているけれども、現況はさっぱりである▼こうした厳しい状況から逃れるために自動車産業は、タイやインドなどに工場を新設し、他の産業の海外進出もラッシュの勢いだし、日本の産業空洞化の懸念は強まる一方である。これでは、失業者も多くなるだろうし、家庭の所得も低くなり最後の頼みとして生活保護を申請に、となり、200万人超の最大となったのだろうが、いささか物悲しい▼実際に日々の暮らしに困り生活保護から支給される少ない金額で細々と生きている方々が圧倒的なのだが、こんな切々たる話の世界にも不正が罷り通っているのは如何にも情ない。あの東日本大震災の被災者を巧みな口説き文句で騙した詐欺がいたが、生活保護でも同じ手合いがおり、どうやら暴力団やらが関与しているケースが多いらしい▼厚生労働省の発表では、2010年度の不正受給者は2万5千件超、金額にして128億円にも達するという。この制度を利用するには、賃金収入があるかないかの質問があるのだが—「ない」と虚偽の申告が1番多かったそうだ。厚労省の調査漏れもあるだろうから、もっともっとこんな小悪党はいっぱいなのに違いなく、こんな「税金盗っ人」の不埒極まりない輩の取締りは厳しく—と願いたい。(遯)

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