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JICA日系研修員事業=元研修生が体験を語る=「ブラジルで役立てたい」=本年度の募集は4月から

ニッケイ新聞 2012年3月23日付け

 日本での研修を通して最新技術や知識を習得し、当地で貢献できる人材を育成することを目的に国際協力機構(JICA)が実施する『日系研修員』の募集が4月1日から始まる(申込み締め切りは5月25日)。上期、下期と年に2回募集し、毎年約80人が参加する。昨年度の長期研修に参加した3人に、研修体験を語ってもらった。


木原健次さん(27、二世)

 2011年5月〜2012年3月、学校法人「吉田学園」(北海道札幌市)、コンピューター・グラフィックス(3DCG)のクリエイター養成

 アニメや漫画好きで大学ではグラフィックデザインを専攻した。「進んでいる日本の技術を学びたかった」
 立体感のあるアニメーションや商品のイメージ制作のほか、デッサンなど絵の授業も受けた。一般の学生に交じり自分の作品を発表。「3〜4分間のショートストーリーで好評を得た」とか。
 「先生が皆優しく、言葉が理解できるよう分かり易く説明してくれた」と言葉の面での心配はなかったという。
 休日は友人らと出かけることが多く、日本各地を旅行し、大いに楽しんだようだ。「とにかく食べ物がおいしかった」と笑顔を見せる。
 「ブラジルで学んだことを授業で応用し、またそこで新たに学ぶことでより技術を磨くことができた」と自信を見せる。 今後の就職活動では、デザイン事務所、テレビ局、ゲームプロダクション、広告会社などでのデザイナー職を希望しており「日本で学んだことを生かせるような形で仕事ができれば」と意欲を見せた。


寺島ジュリアーナさん(26、三世)

 2011年5月〜2012年3月、「関西医療大学」(大阪府泉南郡)、鍼灸学

 ブラジルでは大学で生体臨床医学を専攻し、大学院で中国式の鍼灸学を学んだことから「日本式の技術を学びたい」と志望した。
 4年生の課程に所属し、臨床実習では「無血刺絡療法」「経絡療法」など複数の技術を習得。「刺さずに行う鍼治療を学ぶことができた。将来ブラジルで使えると思う」と嬉しそう。
 レポートも5回ほど日本語で提出する必要があった。「専門用語が難しく大変だったが、先生が親切で内容も充実していた」と満足げに語る。
 帰国した現在、大学院修了の最終段階。卒業後は鍼灸師の免許を取得する見込みだ。その後は「鍼灸のクリニックに何年か勤めて経験を積み、自分のクリニックを開きたい」と夢を語った。


原・田港エライネさん(27、四世)

 昨年6月〜11月、NPO法人「多言語教育研究所」(群馬県伊勢崎市)で研修

 研修先は、バイリンガルや多言語教育の研究と実践、人種、性別、宗教、国籍による差別やいじめのない教育環境を目指して活動する2000年に設立された団体。
 ブラジルでは心理クリニックで働き、日本からのデカセギ帰伯者の心の問題に触れたことから「日本に住む外国人の問題を知りたかった」。
 伊勢崎市に加え、デカセギが集住する同県の高崎市、大泉市、埼玉県本庄市などから相談者が訪れ、ブラジルのほかペルー、フィリピン国籍の4〜18歳までの子供達やその家族が抱えている問題を聞き出し、アドバイスを行った。
 ブラジル人、メキシコ人、アメリカ人、日本人など15人前後の相談員がおり、子供達が通う日本の学校の教諭や校長などと話す機会もあったという。主にデカセギ子弟の心理面の支援、カウンセリングにあたった。
 「日本の学校になじめず障害児だと思われたりするケースもあった」
 母国語を忘れたりアイデンティティを見失ったりするなど、子供達の重要な問題に直面、「親は子供の将来を考えておらず、子供も未来を描けない」と指摘した。
 また、教育研究者、心理学者、医者などと会合を開いて外国籍の子供への教育について話し合った。いじめを無くすことを目的に、子供達が通う日本の公立学校3校で「外国籍児童の母国の文化を知ってもらう」プロジェクトを実施した。
 エライネさんを含む団体スタッフ4人が学校に出向き、食べ物や服、遊びなど様々な文化を紹介。「違いがあることすら分からなかった子供達も多く、皆びっくりしていた」と成果を語る。
 現在は、日本での経験をもとに日伯文化の違いについて研究すべく、大学院進学のため準備を進めているという。

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