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パラグァイ=貢献外国人に土地贈与=土地問題の底にある旧習=坂本邦雄

ニッケイ新聞 2012年3月31日付け

 パラグァイでは古くより為政者が政府に功労があった者やアミーゴ(親友)に対し、褒賞又は謝礼の意味で大小の国有地を無償分譲する不文律の習わしがあった。
 筆者が良く記憶している例としてはある日本大使が帰任の際、土地を荒らさず、霜害にも強い林間日陰栽培農法の普及を、外交官には畑違いながらも良く研究して貰ったと云う事で、何処かの良い土地の一地区をストロエスネル大統領が寄贈した話がある。
 これを日本政府は、何処の国の大使も離任時は慣例として勲章を貰うのは当然としても、土地の贈与を受けるとは何事かと問題にした。当の大使は、アミーゴの大統領の誠意を受けて何が悪いかと抗議したらしいが、結局は外務省を辞めることになってしまった。
 もう一つは、ラ・コルメナ人として忘れられないのはブラジル人のジュアン・ウリセス・カスタニャ博士に関しての例である。このドン・ウリセスは南大河州ポルト・アレグレの出身でバルガス政権下、パラグァイに政治亡命して来た非常な博学者で、パラグァイの最初の産業組合法の起草者として知られ、その功労に対し当時のイヒニオ・モリニゴ大統領は或る面積の土地を贈与した。
 ドン・ウリセスはパラグァイ産業組合運動の基礎を成した大の組合主義者で、恰も存亡が疑われた戦後のラ・コルメナ植民地の起死回生の鍵となったラ・コルメナ産業組合の創立に親身になって心配してくれた人である。
 この様に多くの内外人に対する国有地無償分譲(贈与)の旧習は、土地が有り余っていたパラグァイで善かれ悪しかれ昔からあった話なのだが、折角の土地が其の後に於いてどう活用されたかが問題なのである。
 恐らく貰った方も農牧林業に経験がなく、又色々な事情で其の土地の多くは本来の開発が為されず、地主不在の遊休地所と化すのは必須の成りゆきであった。

 農地改革は大嘘?!

 国有地管理には農牧省管轄下の2004年に改組された国立農村土地開発院・INDERT(旧農地改革局・IRA/旧農村福祉院・IBR)が当たり、国家農地改革政策の実施責任機関である。前述の土地寄贈の手続も過去一貫して此の現機関及び前身各機関を通じて行われた。
 然し、悪い事にINDERT取り扱いのこれ等の土地も含めて、農地改革用地の分譲地が何回も転売され、地券の正当性が怪しく、従い大蔵省の地籍公共登記局の登録も曖昧だと云う大きな問題が底流に多々存在するのである。
 従い、この辺りから農地改革は過去何十年にも亘り歴代政権時代から受け継がれて来た古い問題で、現政権が一朝一夕にして改善出来る農民問題ではないと、今になってルーゴ大統領は責任逃れの様な事を云うのである。
 確かに、これで〃不正取得農耕地〃の取り戻しの目的で土地なし農民の不法侵入を当局が裏で煽動している意味(口実)が分かって来ると云うものだが、既報のニャクンダイ郡のブラジル人トランキーロ・ファベロ氏の農場の侵害の例は其の矛先を間違った観があるのである。詰り、昔の〃不正取得地所〃を政府が押収し農地改革に当てると言う趣旨は良いが、調べて見ると往々にして地券は案外正当だったりして、関係筋は失策の巻を演じるのである。
 そして、ルーゴ大統領の選挙公約だった筈の農地改革や大豆生産業者の擁護策等は結果的に真っ赤な大嘘だったと云われても仕方がないのである。
 因みに、パラグァイで大型機械化農法に依る大豆や其の他の穀物生産が始まったのは1970年代で、耕作面積は全国で2万8300ヘクタール程度だったものが、90年代には大豆、小麦、トウモロコシ等の穀物複合生産ブーム時代に入り、最近では大豆だけでも作付け面積は大略270万ヘクタールで、同生産量は750万トンに達している。

 ブラジル人ら外国人農家の貢献

 これは、世界で大豆生産6位、輸出では4位の大豆大国に伸し上がった事を示す以外に、直播不耕起栽培や農業バイオテクノロジーの分野でもパラグァイは世界のリーダー格15ヶ国中の一国に数えられるに至ったのである。此の背景には、ブラジル40%、ドイツ、日本、メノニタ(キリスト教メノー派で独自の生活様式を持つ白人移民集団)の36%の各外国系にパラグァイ人24%の農家生産力が大いに貢献しているのである。
 なお、パラグァイでは元来遺伝子組換え改良品種の栽培は禁じられていたが、主にアルゼンチンからの種子密輸で、最近は生産大豆の80%が同品種のものだと言われる。
 処で、ブラジルとの〃過熱国境地帯〃(アルト・パラナ、アマンバイ、チャコ等)に集中的に入植したブラシグァジョ(パラグアイ在住ブラジル人)は全国で約35ー50万人を数え、パラグアイ総人口の約10%弱を占めるが、1960年代にストロエスネル独裁政権が奨励したブラジル人入植者受け入れに依ったものだと言われる。
 だが、既に1980年代には其の結果の危険性を憂慮し警鐘を鳴らす者もいた。然し、思うに最近は英国をも抜いて世界で6位の経済大国に躍進したお隣の国力の影響の波は、意識的な経済攻勢ではなくとも、此のパラグァイに多くの面に於いて波及、浸透して来るのは自然の力学と言うものであろう。
 この様に、大農地と零細農地のひず歪みの産物たる〃土地なし農民〃問題や貧富の差が深まる情勢下、無策の現政府に真面目な農地改革を求めるのは無理な話しなのである。極言すれば、現状のパラグァイに於いては下手な農地改革は〃無用の長物〃である。必要なのは、現に見られる如く国家経済の向上に益し、競争力のある産業の生産性を強化増進する現在の〃緑の革命〃の促進に更に努力す可き事である。
 そして、要注意なのは政府が故意に剣呑化させているとも受け取れる国内情勢を政治利用し、左傾化政策の定着を図り、パラグァイの一般国民が好まないライフスタイルの国家改造を決して許してはならない事である。

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