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イペランジャホーム問題=医師らの証言に憤る徳永さん=問われる援協の問題意識

ニッケイ新聞 2012年3月31日付け

 【既報関連】「よくあること。(援協)本部に報告することではない」—。援協が経営するスザノ・イペランジャホームに入居していた丸山ナツ(享年87)さんが亡くなったことに関し、本紙記者に根塚弘同ホーム長は、3月17日にそう言い切った。
 娘の徳永典子さんは母の死に関する疑問や不審点を援協本部やホーム以外の各方面に訴えていた。根塚氏の耳にも入ったようだが、それゆえに何の対応も取らなかったようだ。
 援協から徳永さんに初めて連絡があったのは、本紙が取材を終え、『イペランジャホームで誤診? 善処か手遅れまで放置か』(全3回)の掲載前日の21日。ナツさん死去からすでに1カ月半が経過していた。
 「直接話を聞かせて欲しい」との足立操事務局長の電話に「誘導されるのでは…」と訝った。というのも、根塚ホーム長の言動を聞きおよび「私が問題にしていない部分を取り上げ、変な方向に向けようとしている」と不審感を持っていたからだ。
 しかし足立氏の「どうしても」との言葉に、記者と援協幹部の同席を条件につけた。その後、足立氏は「中立の立場で双方の話を聞いてほしい」と記者に伝えている。
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 同日午後、「詳しい話を…」と本紙編集部に坂和三郎副会長が姿を見せた。広報担当も兼任するが、一連の話はその日の朝に聞いたばかりだという。足立氏は、徳永さんに再度電話し、坂和副会長から聞いたであろう翌日の記事掲載の話を伝えた。
 「それ以外は何もはっきりと言わなかった。新聞に出ないよう口止めしたかったのかな」。そう思った徳永さんは「仕方ないから話し合いはやめましょう」と電話を切ろうとした。
 「新聞に真実が書いてあるのなら…」と言葉を濁す足立氏に「記者に嘘は言っていない。話し合いはいいから、母の足の写真を見てほしい。そうすれば私がなぜ声を上げているかわかる」。
 足立氏は沈黙を続け「(援協側に)悪いところがあったのなら、きちんとしないといけない。また何かあれば連絡する」と電話を切った。
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 翌22日、援協の常任理事会が開かれた。
 坂和副会長によれば「深い話にはならなかった。あの時点で誰も真相を理解しておらず、話し合い後の対応を考えていた」と話す。記事が掲載された日であったにも関わらず、読んでもいないのか、理事達は誰も問題と捉えなかったようだ。
 26日朝、足立氏は徳永さんに、自身と副会長2人の「4人で食事をしながら話を」と伝えてきた。記者の同席がないことを訝る徳永さんに「記事は出たから、もう新聞社は関係ない」と言ったという。
 一度は食事抜きで話すことを承諾した徳永さんだが、後日、思い直して断った。
 「新聞の記事を読んで、医師、正看護婦の証言には、やはり憤りを抑えられない。自分一人で誰も味方はいない。話を大きくして、不利な方向に話が展開するのは避けたい」
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 ホーム入居者の死に対し、遺族から疑問の声が上がっているにも関わらず常任理事会で問題にもならず、隠蔽体質と揶揄されても仕方のない事務局の対応——。
 連載中の22日、徳永さんは記者に感謝の意を伝えた。「ちょうど今日が母の四十九日。記事がいい供養になった。ありがとう」
 結局、来週にも役員らと話し合うことが決まっている。援協の誠意ある対応が待たれる。

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