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ブラジル國誠流詩吟会=30人が互いの吟詠楽しむ=宗家も来伯、貫禄見せる

ニッケイ新聞 2012年6月14日付け

 ブラジル國誠流詩吟会が10日、リベルダーデ区のホテルで『ブラジル國誠会温習会』を開催した。吟士も含め約30人が集ったほか、日本から荒國誠宗家が訪れ2題を吟じ、覇気ある吟で貫禄を見せ付けた。
 45年前、作本登実子現会長の両親、郷原重登・満寿枝さんが愛好会として始めたのが同会の起こり。20年前に同流派の指導者が来伯したのを機に、國誠会として発足した。現在、60〜70代を中心に約20人の会員が所属している。
 吟じ始めに短い前奏があるだけで、伴奏はない。肉声勝負の温習会だ。まだ入会して間もない会員も多いが「桂林荘雑詠諸生に示す」(広瀬淡窓)、「富士山」(石川丈山)、「宝船」(富野君山)など、それぞれの詩の解釈を声に乗せて丁寧に吟詠した。会場の座席では目を閉じて聞き入ったり、静かに合唱したりとめいめいに吟を味わっていた。
 車椅子で訪れた88歳の黒田貞徳さんは「宗家の前で歌う」と張り切って練習していたが、体調を崩し練習を中断していた。本番では何度も詰まったが、荒宗家が自ら歌ってリードし最後まで歌い上げ、「よう頑張ったね」と会場からは大きな拍手が起きた。
 最後は荒宗家が絶句「貧交行」(杜甫)、長律「母」(松口月城)を披露。会場に響き渡る声量と情感のこもった歌いっぷりに、誰もが引き込まれた。
 荒宗家は最後の挨拶で、「詩吟は「要は気持ち。國誠流の詩吟は、声や節回しが良いとかいったことじゃなく、鍛錬でいかに詩を表現するかに力を注いでいる。神の声を持つといわれた先代の後をつがなきゃいけないが、いかに鍛錬するかだけだと思っている」と同流派の良さを説いた。
 入会2カ月の坂田美代子さん(62、鹿児島)=サンパウロ市=は、「CDでも聞いていたけど、肉声で聞くとすごく迫ってくるものがあって涙が出た。自分たちの声の出し方とは雲泥の差」と感動を露にした。
 指宿君江さん(63、長野)=サンパウロ市=は「まだ始めて半年ですごく緊張したけど、先生のすばらしい声が聞けてよかった」と話した。

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