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パラグアイ=ルーゴ降ろし騒動の真相=クーデターか合法弾劾か=坂本邦雄

ニッケイ新聞 2012年7月28日付け

 国民は自分に相応した価値の為政者しか選ぶ事を知らない——と云う説がある。いっぺん一遍選挙で選んだ大統領を後で当てが外れたからと言って、政権中途で引きずり下ろすのは大変な事なので気を付けなくてはいけない。この度のパラグァイの〃ルーゴ降ろし騒動〃はその良い一例で、正に国民は選挙において投票権を行使はしたが選ぶ事を知らなかった結果である。
 それで、パラグァイ国会は上下両院の絶対多数決でこれ迄の度重なる「行政不振」の廉でルーゴ大統領の弾劾裁判に踏み切り、憲法や関連諸法規に基きごく平穏裡に審理中だったところ、伯国リオ市で丁度(6月20日ー22日)開催されていた「国際環境会議・リオ+20」に出席中の「南米同盟」(ウナスール)のメンバー各国外相団が同会議から抜け出して、〃外交ギャング〃の如くアスンシォン市に乗込んで来た。
 その口実は国会の弾劾決議に依るルーゴ大統領の〃違憲罷免〃を阻止する事であった。
 そして、このミッションのリーダー格のベネズエラのマドゥロ外相は、政庁の大統領執務室でルーゴの面前で、急きょ呼び出されて来た陸海空各司令官に対し、大統領擁護の為に国軍が決起すべく、テーブルを叩いてまでそそのか唆したと云う。
 内政干渉にも程があり、もちろん軍部はソッポを向いた。外相ミッションに有るまじき立ち振る舞いだったこの〃外交ギャング団〃は国会の弾劾決議を知るや、負け犬の様に尻尾を巻いてこそこそと立ち去ってた。そもそもこのルーゴ弾劾は政治的な処置であり、不信任案に基く典型的な大統領インピーチメントであって通常の司法裁判ではないのである。
 わざわざアスンシォンに足を運んだウナスール外相団は、被弾劾者の弁護に充分な時間の余裕を得るべく努めた。でも、パラグァイ国会は冷静に合憲法定プロセスに依る大統領弾劾に必要な多数決票数を集め、一挙にルーゴを更迭して仕舞った。問題にされたのは電撃的に為された弾劾決議だが、現行憲法に一字一句たりとも違反はしない透明な合憲処置であった。
 当然、憲法が定める継承順位に従って、フェデリコ・フランコ副大統領が昇格し、正式に第48代目の大統領に就任した。同じく、国会は青党のオスカル・デニス参議員をフランコの後任副大統領に任命した。
 ところがこの後、亜国のメンドサ市で行なわれた(6月28日ー29日)メルコスール首脳会議では、正会員国パラグァイの出席がないままで、次期全国総選挙で選ばれる新立憲大統領が就任するまで(2013年8月15日)、現フランコ政権を認めず、かつその会員資格停止が採決された。
 なお、これ迄にパラグァイが執拗に反対して来たベネズエラのメルコスール正会員としての加盟が承認された。このベネズエラの正会員国の資格公認は7月31日にリオで開催予定の特別首脳会議において正式に発表される筈である。
 更に、南米同盟(UNASUR)、米州ボリバル同盟(ALBA)、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)も揃ってパラグァイ国のフランコ新政権を認めず、そのメンバー資格停止を決定した。但し、これは経済制裁ではなく、フランコの〃クーデターに依った違憲政権〃に対する懲罰であって、パラグァイの国民が対象ではないと、訳の分からない理由付けをしている。
 もっとも、目下四面楚歌の如きパラグァイ情勢の実態をつぶさに査察する為に今月の1日から3日にかけて、インススルサ事務総長を団長とするOAS・米州機構のミッションが来パし現政府、前政権関係者、政財界、社会団体等々、全ての意見を公平に、かつ詳細に聴取し、当初とは異なる好印象を受けてワシントンに帰任した。
 米州機構はパラグァイに資格停止やその他の制裁を加えるのは不条理だと云う意見の様である。なお目まぐるしい話だが、この15日(日)にはEU・欧州会議のドイツ、スペイン、フランス、ポーランド等の代表8名からなるミッションが先のOAS・ミッションと同様にルーゴ更迭の事情調査に来訪したが、フランコ大統領は大歓迎だった。
 この結果、ルーゴ前大統側にかたよった固定観念を—良識が勝るならば—EU・ミッションもかなりその認識を見直さざるを得なくなるのではと思われる。

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