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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年7月28日付け

 日本は酷暑の日々がつづく。熱射病や脱水症などの熱中症で病院に搬入された人々が5千人を突破し大騒ぎになり、こんな真夏にこそ健康管理に力を入れ頑張りたい。夏だからと「冷やしソーメン」だけではなく、脂ぎらぎらのステーキもだし、大伴家持の「石麻呂にわれ物申す夏痩せによしといふものぞむなぎ取り召せ」と—滋養豊かな食事をと心がけたい▼立春や立秋の前を土用と云い、きのう27日は「土用の丑の日」だった。家持の万葉集の頃から「うなぎ」は食膳に上ったのだが、公達らの貴族はあまり好まなかったらしく、調理も、口から尾まで竹串を通した丸焼き塩味の素朴なものだったようだと本山荻舟は「飲食事典」に記している。だが—「夏痩せによし」と栄養に富んでいるの認識は高く、庶民らが好んで口に運び楽しんだのではないか—とも▼今や「うなぎ」と云えば「鰻重」と「蒲焼」ながら田舎育ちとしては東京の白焼きにしたのをして脂抜きしたのはどうも頂けない。あれは関西風が良いし、江戸好みは「うなぎ」じゃない。と、ちょっぴり小言幸兵衛になったが、「丑の日」にうなぎをたべるようになったのは江戸の平賀源内が、うなぎ屋に頼まれて「丑の日に鰻」と伝授?したのが始まりとされるが、真偽のほどは保証しかねる▼と、講釈が長引いたが、今年は養殖に使うシラスウナギが極端に少なく、値上がりは避けられないの報道しきりだったし、高くはなった。だが、世に商人はいる。値下げに踏み切ったスーパーもいっぱいだし、ママの手になる夢の「鰻重」に舌を鳴らし満足げな子どもらの笑顔も目に浮かぶ。(遯)

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