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「健康体操」は誰のもの?=(下)=川添代表「本部の意向尊重すべき」=岩井会長「協会に独占権ない」

「嘘は言いません」—協会代表者らが一つ一つの出来事を詳細に記録したノートと、両者がやり取りした書類の数々。

 商標登録の出願をした後、官報掲載から60日以内ならば、他団体から異議申し立てができる。協会がALCESの出願に気づいた時点で期限は数日後と迫っており、ロゴ・名称の登録出願には法人登録が必要だった。
 「困りに困りぬいて、やむなく長崎県人会(法人登録済み)を使わせてもらった」と川添博代表(同県人会会長)は明かす。すぐさま主な役員に電話で承諾を得、商標登録への異議申し立てを行った。それから約2カ月後に法人登録が完了したため、権利は協会に譲渡された。
 現在はINPIの審査待ちの状態。どちらかが出願を取り下げない限り、結果が出るのは約2年後だ。「申請は実績のある方に認められる。90%協会のものになる。何も心配はしていない」と川添代表は話す。
 本部の意向を尊重し、許可を得ながら活動を進めてきたこともあり、ALCESがロゴや名称を本部の了承なく登録出願したことは「あまりに勝手。あってはならないこと」だった。
 一方、県人会の名を使って異議申し立てをしたことに対し、岩井会長は「県人会長の職権を利用するなんて、法律的にも道義的にも通らないこと」と批判する。加えて、協会が出願取り下げを要求し、全健音の健康体操を辞めるよう警告していることに対して「商標登録は国ごとだから問題ない。なぜ、協会で体操の権利を独占しようとするのか」との疑問を投げかける。
 協会が体操の指導中止を警告するのは、本部が協会を当地における「健康表現体操の普及活動を総括する正式で唯一の機関と認める」、つまり支部の一本化を求めているためだ。
 そのため協会は和解を目指し、昨年3月末のフェスティバルの折に岩井会長と市田さんを呼び、斉藤千代子会長含め本部役員3人の同席の下、話し合いを持った。市田さんは「(協会に)戻りたい」と発言し、「全健音の健康体操は協会を通して行なう」などの7項目に署名を行ない、事態は収束したと見られた。
 ところが約2カ月後、話し合いの際に「問題の真相が伏せられた」ことを理由に、岩井会長から「市田は協会に復帰しない」との文書が届いた。市田さん本人に確認した所、「呼ばれればいつでも指導に行くという意味。協会に戻るつもりはない」と復帰の可能性をきっぱり否定した。
 川添代表によれば本部には、別団体であるALCESに対して講習や審査認定を行なう意思はない。そのため、今年日本であるフェスティバルにはALCES会員は招待されなかった。
 しかし、本部で講習を受けない限り、全健音の新しい健康体操は習得できない。岩井会長は、「本部に独占権利はないし、体操実施を認めてもらう必要もない」と述べ、「独自の体操を作ればいい」との考えまで示している。
 市田さんは「指導を止めるように」との協会からの警告に対し、「私は健康体操を広めたい一心で、日本に行ったり教材を買ったりして、何十万円も払ってきた。苦労して習得したことを、どうして使っちゃいけないんですか?」と興奮気味に反論し、「自分が出来る範囲でやっていけたら、それでいい」と話した。
 「健康体操は皆のものであり、自由にやればいい」というALCESと、本部に忠実にあるべきと考える協会—両者とも何とか協調したいとの思いはあるが、互いの意見は平行線のまま・・・。まだまだ解決の兆しは見えていないようだ。(終わり、児島阿佐美記者)

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