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「しっかりした心柱を」=松柏の川村校長が講演=ブ日本会議の勉強会で

ニッケイ新聞 2012年9月5日付け

 「心柱さえしっかりすれば、外側は新しい人に任せて、その時代に合わせた姿に変わってゆけば良い」。ブラジル日本会議の第3回勉強会で、松柏学園の川村真倫子校長(83、二世)は8月23日午後、龍馬会事務所で、半世紀以上にわたる日本語教育の末に辿りついた境地をそう講演し、集まった25人は肯きながら聞き入っていた。
 まず、法隆寺の五重塔、東京スカイツリーなど日本が世界に誇る建築物に共通することとして心柱の存在を強調した。日系子弟の指導から始まった同校だが、最近は韓国、中国系などの非日系も増えており、日系向きだけでない教育が必要になったという。そのため民族を超えて普遍的な〝心柱〟として、日本語や日本文化が本来もっている世界平和に役立つ普遍的な精神を、教育の中軸に据えるようになったとの経験を語った。
 その一例として、同校生徒が訪日使節団としてハワイに立ち寄った際の逸話を語った。子供達は米国の立場から撮影したハリウッド映画『パールハーバー』を見せられ、「日本人は恥知らず」などと感想を漏らしたのを聞き、川村校長は「日本がそうだと思うのなら、ここからブラジルへまっすぐ帰っても良い。でも日本が本当にそうか見に行ってもいいのでは。広島の原爆史料館を見た後、自分達で答えを出してみたら」と提案した。
 子供達は同史料館から泣きながら出てきて、「先生、日本人は悪くなかった」と言った。校長は「じゃあ、アメリカの兵隊が悪かったの? 彼らも自分の国を守るために命を捧げたのよ」と続けると、子供は「戦争が悪いのね」と納得したという。
 視察団が両陛下に謁見した際、皇后陛下は「あなた方はブラジル人です。ブラジル国のために一生懸命勉強しなさい」と言われたとの話を明かし、それがどこであれ「国を思う気持ち」を持つことが大事であり、「自分の民族を愛せない人は、他の民族を尊重できない」と強調した。
 ただし、日本文化を剥き出しのまま子供達に教えても、拒絶反応が起きることがある。「どういう形で見せるかが難しい」と常に頭をひねっているという。
 日本人は自分の文化を外国に普及するのがヘタだが、「日本語が持っている美しさを外国人に伝えることで、日本文化が本来持っている普遍的な価値観、民族を超えて共通する心柱を世界に広げなくては」と締めくくった。

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