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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年10月17日付け

 12日からサンパウロ市で開催されている汎米報道協会(SIP)第68回総会で、新聞の将来や報道の自由などについての議論が続いている。世界各地の日本人・日系人社会では、日本語が読める人の減少と文字離れなどの世界的傾向による日本語新聞発行部数減少が深刻だが、ウェブサイトやe—book(電子本)の普及で、紙の新聞や書籍が廃る傾向は国や言語を超えた問題だ▼そういう意味で、情報伝達手段の変化と新聞の将来に関する議論がどういう結論に至るか、気にならないといえばウソになる▼中でも、伯字紙記事のこの一文に襟を正される気持ちだ。「様々な媒体の使用が拡大し、デジタル化の波が押し寄せても、報道関係者が心すべき精神は変わらない」事を複数の人々が強調して語っている▼エスタード紙のディレクターはこの精神を「事実や背景を詳細に調べた上で、それらの情報を組立て、洗練された文で伝える」事と表現。どんなに真実を明らかにしようとしても、そのための方法を知らず、それを表現する能力を持たなければ、どんな媒体や言語を使っても良い報道はできないという事を、身を持って知る古参達の言葉は重い▼弊社でも紙の新聞やPDF版購読者がおり、サイトやフェイスブックで記事を読む人もいる。だが、これらの記事が間違いだらけで読むに耐えない文で綴られていれば、紙の媒体であれ電子媒体であれ、購読は減る▼媒体としての新聞がその形や扱う内容を変える事はあるだろう。だが「質の高い報道は新聞がなくなっても生き残る」との言葉が、今後も現場の記者達を支え、突き動かしていく事だろう。(み)

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