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■訃報■小野敏郎さん

ニッケイ新聞 2012年10月24日付け

 日本で有名なボサノバ歌手・小野リサの父、60年代にクラブ「一番」をサンパウロ市セントロで経営していた小野敏郎さんが22日、東京の自宅で家族に見守られながらガンのため亡くなった。山梨県出身、行年88歳。数年前から入退院を繰り返す闘病生活をしていたという。
 1924年に生まれ、50年代終り頃に渡伯し、当時コロニアでは高級料亭全盛の時代だったが、「日本の高級クラブのサービスをブラジル人向けに」との独自の考えからサンパウロ市ジャバクアラ区で最初のクラブ「ブラック・ジャック」を開店、約3年後に二番目のクラブ「一番」をセントロに開いた。
 「当時、ブラジル人の普通のライブハウスでは飛び入りを歓迎しなかったが、『一番』ではOKだったため多くのミュージシャンが喜んで演奏した。そういう場を提供したのはブラジル音楽にとって偉大な功績」と音楽史に詳しい坂尾英矩(ひでのり)さんは解説する。
 その店で当時最高レベルのブラジル音楽に親しんだ娘のリサさんは、1972年頃に家族で帰国した後、日本でボサノバ歌手としてデビューして成功した。敏郎さんは東京・四谷でブラジル音楽を聞かせるレストラン「サッシ・ペレレ」を経営していた。

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