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■記者の眼■留学希望者は訪日前に=当地日語学校の活用を

ニッケイ新聞 2012年11月1日付け

 在伯大使館の井上一等書記官によれば、伯国政府の奨学金プログラム「国境なき科学」(Ciencia Sem Fronteiras)は来年4月からの派遣が見込まれているが、実務的な詰めの最終段階にあり、実際の募集はまだ始まっていない。
 派遣時期はもっと遅くなる可能性が高いが、これだけの大人数が一斉に日本留学することは前代未聞であり、今までにない大規模な学術交流となることは間違いない。
 では、どんな学生が選ばれるのか——。受け入れを表明しているのは東大や筑波、早稲田など日本国内でも著名な国公立、私立大学だ。授業は英語で行なわれるので、留学生の日本語能力は審査では問われないと同書記官は説明する。「あれば素晴らしいが、条件にすると行ける人が限られてしまう」との考えだ。
 つまり、日本語をほとんど解さない状態で留学し、現地で日本語を学ぶ学生が大半のようだ。
 ただし、書記官は「(授業は英語だが)日常生活は日本語が必要で、せっかく日本に行くので日本人の友達も作ってほしいし、日本を存分に楽しんでほしい」ことも認める。
 伯国政府が念頭に置いているのは、あくまで科学技術分野の人材育成、ブラジルの競争力強化であり、学生にその国の言語や文化に触れてもらうことが主目的ではない。
 その意味で、日本語能力の有無を審査時から重視してしまうのは主旨に沿わないことであり、その点では前述の大使館の説明はその通りだ。
 しかし、当地には400校からの日本語学校がある。文協が経営する日語学校や日伯文化連盟(アリアンサ)のような語学学校、大学の日本語学科など、規模や性質の違いはあれど、日本語を教える機関は全伯的に広がっている。
 訪日前に日常会話レベルの日語を学んでもらうことはできないか。当地ならポ語で学べるところもあるし、その方が日本での生活への適応も最初からスムーズにいく。
 ブラジル日本語センターの板垣勝秀理事長によれば、昨今は非日系人を中心に生徒が増え、非日系の教師もいるという。それだけ当地での関心は高い。それを利用しない手はないだろう。
 板垣理事長は「全伯にある日本語学校のネットワークを活用すれば留学希望者、予定者に対して日本での生活の注意点も事前に伝えることができる。彼らの目的を達成するために役に立てることがある」と意欲を見せている。
 同センターの丹羽義和事務局長も「行く前に、最低限の日本語は勉強できるように配慮すべき。速成塾(センターが主催したデカセギ希望者向け短期日本語講座)を応用できるのではないか」と話しており、関係機関との調整を検討したい意向のようだ。
 1千人が留学するなら希望者はその2、3倍はいる。日本留学という具体的な目標をもった彼らが学習者になれば、日本語教育界も同時に活性化する、まさに一石二鳥になるに違いない。なんとか日本側大学、大使館含め関係省庁には、それを意識した施策を講じて欲しいものだ。(詩)

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