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稲盛哲学、市政に活かす=バナナ王 山田勇次さん=「市への恩返ししたい」=盛和塾が「励ます会」開く

ニッケイ新聞 2012年12月14日付け

 「政治家としての挑戦は、稲盛哲学で学んだことの延長線上にある」——。今年10月の全国統一地方選で、ミナス・ジェライス州ジャナウバ市長に当選した山田勇次さん(65、北海道)=帰化人=は、所属するブラジル盛和塾(板垣秀勝代表世話役)が8日に開いた『新市長を励ます会』で、出馬への経緯や来年から腕をふるう市政について熱く語った。

 熱帯果樹栽培業を成功させ、〃バナナ王〃の異名を持つ。86年の開業から大きく成長し、現在2千人の従業員を抱える経営者の政界進出—。その源流となったのは、稲盛和夫塾長からの「日本人の魂を証明してください」という言葉だった。
 「2004年に日本であった盛和塾全国経営体験発表大会で優勝した際、塾長が自著に書いてくれた。それから常に胸にあって、どうすれば良いかを考えていた」
 その後も順調に事業拡大を進めるなか、熟考の末、市長選への出馬を決意。「勿論、どれだけ自分が市民らに評価されているか試したい気持ちはあったし、何より市への恩返しがしたかった」「物心両面の幸福」「利他の精神」を追求する稲盛哲学に裏打ちされたものだった。
 強い支持基盤を持ち、市長経験のある対立候補の当選が有力視されていたが、「ユウジ、彼に勝てるのは君だけだ」との支持者の励ましに支えられながらの選挙戦。
 「政治を真面目にやる方法が必ずあるはずだ」という理念のもと、市民一人一人に誠意と熱意を伝えるため、路上生活者にまで声をかけ、1日も休まず手を振り続けた。
 迎えた投票日。開票作業の3分の1が終わった時点では対立候補者が優勢だった。相手方は勝利を確信し、祝砲の花火を鳴らしていたという。しかし、そこから山田票が大きな伸びを見せ、終わってみれば1万4605票対1万4269票という接線で当選を果たした。「発表された瞬間に思わず叫んだ」と笑う。
 今後は、「医者も薬も足りていない」という公立病院、増加が叫ばれる失業者の両問題の解決に積極的に取り組む。
 一方で、現在2400人いる公務員の削減も明言。「無駄を減らして必要なところに資金を回す。現状は当たり前のことができていない」と赤字が続く財政面の改革も視野に入れる。
 さらに、新たな市政の目玉となるのは貨物飛行機の発着空港の建設だ。「この街の農業製品は大きな可能性を持っている。鮮度の関係で船便では運び辛いものを外国に輸出するためにも、絶対に成功させたい案件」と声高に語った。
 当地の塾生に誘われ参加した盛和塾東京支部の塾生・田所史之さん(49、福島)は「自分と同じ日本人がこれだけ伯社会に認められ、市長にまで上り詰めたことは本当に誇らしい。今後の活躍に大きく期待しています」とエール。ブラジル日本商工会議所から出席した平田藤義事務局長は「日本企業の誘致にも期待しています」と話していた。

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