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「日本は没落と苦悩に喘ぐ国となるのか—否、若者がいる」=フォーリン・プレスセンター理事長 赤阪清隆=第1回=没落へと向かう日本=社会崩壊から始まる破壊

ニッケイ新聞 2013年1月4日付け

 2001年から03年までの2年間、在聖総領事を任じた赤阪清隆氏は、その後、03年から経済協力開発機構事務局(フランス国パリ)事務次長、広報担当国連事務次長(広報局長)を務め、現在はフォーリン・プレスセンター理事長となっている。昨年12月6日に中央大学多摩キャンパスで学生向けに行われたこの講演は、当地事業をよく知る赤阪氏ならではの、在外邦人の共感を得る内容が多いと思われるので、本人の了解の元ここに転載する。(編集部)

本日はこういう貴重な機会を与えていただいて大変光栄です。私は今年3月末に国連を退職したのですが、国連におりました時から、中央大学にはアカデミック・インパクトという国連と世界の大学をつなぐネットワークに積極的にご協力いただいて、大変感謝をしております。福原紀彦総長、加藤俊一副学長(としかず)をはじめ、お世話になっております先生方にお礼を申し上げます。
今日は、私の国際機関での経験なども踏まえて、日本の将来について日ごろ考えていることをお話したいと思います。少しでも皆さんの将来のためにお役に立つようでしたら、大変幸いです。
先般、アメリカの大統領選挙で敗れたロムニー共和党大統領候補は、今年8月に行った演説の中で、「アメリカは日本じゃない。10年も100年も没落と苦悩にあえぐ国にはならないのだ」と言いました。無視できない日本を侮辱する発言でした。
また、韓国の青瓦台(大統領府)によれば、李明博大統領は今年8月13日の国会議員らとの午餐会で、竹島を数日前に訪問したことに関して、強く反発している日本の反応は「予想していたことだ」と述べ、「国際社会での日本の影響力は以前と同じではない」との認識も示したと言います。
さらに、シンガポールのビジネス・タイムズ紙の東京特派員は、11月1日付の記事で「日本の政治は混乱しており、経済は崖っぷちかすでに転落しており、外交は酷いことになっている。そして、最悪なのは無力感が蔓延していることである。こういった状況のもと、日本はますます内向きになっており、孤立感が深まり、新ナショナリズムが強まっている」という論説記事を書いています。
月刊誌「文藝春秋」は今年の3月号で、「予言の書『日本の自殺』再考」という記事を載せました。学者たちによる「グループ1984年」が共同執筆し、1975年に文藝春秋に掲載した論文を再掲載したものでした。
その論文によると、あらゆる文明は外からの攻撃ではなく、内部からの社会的崩壊によって破滅します。そして没落の真の危険は、日本人がこの危機や試練を正確に認識する能力を失いつつあること、この危機や試練に挑戦しようという創造性と建設的思考を衰弱させつつあることにあるのです。
さらに日本の若者については、過保護と甘えのなかに育てられて、自制心、克己心、忍耐力、持続力がなく、強靭なる意志力、論理的思考能力、創造性、豊かな感受性、責任感を欠いた欠陥青少年が大量に発生することとなった、と慨嘆しています。この論文が最初に出たのは37年前です。(つづく)

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