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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年1月15日付け

 サンパウロ市南部のカンポ・リンポで8日に発生した妊婦銃撃事件の容疑者の1人が、11日に現場近くのファヴェーラで捕まった。強盗未遂で1年9カ月の刑を宣告され、セミアベルトで服役中の11年11月にサンパウロ州グアルーリョスの刑務所から逃亡した22歳の青年だ。どういう訳か、逃亡後に条件付の自由が認められ、昨年11月に一般検問、12月には無免許でのバイク運転と、今回の事件の現場から半径1キロ半以内で2度警察に連行されたが、2度とも釈放されていた▼被弾したダニエラさんは25歳と若くて健康体だったため、10日の脳死判定後、心臓と腎臓、肺、角膜が少なくとも6人の患者に提供された。他方、事件後に帝王切開で救出されたガブリエラちゃんは、13日に退院し、父親が待つ我が家に。ダニエラさんの命の糸は、ガブリエラちゃんと6人の患者達の新しい命、新しい生活という布に織り込まれている▼ダニエラさんを襲った強盗の1人はまだ逃亡中で、暴力事件増加に対する抗議行動も起きた。サンパウロ州海岸部プライア・グランデでの強盗殺人事件では、14歳少女が家族の面前で一家の主人を撃ち殺して逃亡。同グアルジャーではレストランの主人が7レアルが原因で客を殺すなど、年末からの2週間は胸の痛む事件が続いた▼ダニエラさんの臓器移植の話を読んだ時、サントアンドレー市の人質篭城事件で死亡したエロアーさんと、彼女の臓器を移植された人々の話も思い出した。ブラジルは交通事故などが多いから臓器移植も盛んときいた事がある。交通事故や暴力事件多発による臓器移植の場合、喜びと悲しみの秤はどちらに大きく振れるのだろう。(み)

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