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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年4月2日

 聖週間も終わったが、〃洗足の木曜日〃だった28日、フランシスコ新法王が様々な国籍の受刑者達とミサを行った様子が各紙サイトやTVで流れた。新法王がアルゼンチンはブエノスアイレスの大司教だった時の習慣をバチカンに持ち込んだ瞬間だ▼イエス・キリストが十字架にかかる前夜に弟子達の足を洗った事を記念するのが〃洗足の木曜日〃で、今年のミサはバチカンの聖堂やローマ市内の寺院ではなく、受刑者という予告報道を見た時も驚いたが、受刑者の足を洗い、その足に口付けする法王の姿には、正直、頭を殴られた気がした▼法王に選出以来、ミサで使う金の飾りを止め、法王用の漁師の指輪も銀製、革靴も赤ではなく枢機卿時代と同じ黒靴、専用車は防弾ガラスなしなど、様々な驚きの報道が続いていただけに当然といえば当然かも知れない。だが、大きくもない権力や権威を振り回したがる人が巷に溢れる中、カトリック信者18億人の頂上に立つ人が受刑者の足を洗い、その足に口付けする姿は少なからずショックだった▼「最も高い地位にいる者は他の人々に仕えるべき」との言葉は、「言うは易く行うは難し」の一例で、それを奇をてらうことなく実行できる人は本当に謙遜な人だ▼他人を指差せば、親指と人差し指以外の3本は自分の方を差しており、批判の言葉が自分に帰ってくるものだが、政界騒動などを見ていると、法王のつめの垢を飲ませたいと思う人がいかに多いか。褒める事に徹しようと思っていたのに、物事を斜めに見る癖がやっぱり出てきた。「自分の事を棚に上げて」と言われないうちに、筆を置いた方が身のためか。(み)

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