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日本移民110周年に相応しい遺産としてワーキングホリデー制度を

イメージ写真(フリー写真素材【写真AC】)

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 「日本移民110周年に相応しい遺産」とは何か?――一つは、ビザ制度の整備ではないか。「7月から四世ビザが始まるのに…」と疑問に思う読者が居るかもしれない。
 だが、コラム子にはこの制度は日本政府による一種の「フェイント」に見える。要望が多いから制度を作ったが、実は実現が難しい条件をこっそり入れている。「日系四世受入れサポーター」(日本側の身元保証人のような存在)が必要―という制限だ。
 三世向けビザ資格である「定住者」として渡航するには、日本国内に居住する本人の親族が入国管理局で「在留資格認定証明書」を取得し、それをブラジルの本人に送付して、本人がその証明書を添付して在ブラジル日本国総領事館に特定査証を申請する手続きが必要だ。
 でもそれが難しいから、その手続きが特別に免除された在聖総領事館でしか、三世向けのビザは事実上発行されていない。
 四世ビザの場合、在聖総領事館でも「日系四世受入れサポーター」が必要だ。だから制度はあるけど、このビザを取ることは難しいことが予想される。言い方を変えれば、法務省は本心では受け入れるつもりがない、そんな目くらましはいい加減に止めてもらいたい。
 その裏側では、日本経済新聞6月5日電子版《安倍晋三首相は5日の経済財政諮問会議で外国人労働者の受入れ拡大を表明した。人手不足が深刻な建設や農業、介護など5業種を対象に2019年4月に新たな在留資格を設ける。原則認めていなかった単純労働に門戸を開き、25年までに50万人超の就業を目指す》という方針を発表している。
 日系人には受入れ制限をかぶせて、外国人一般に門戸を開こうとしているように見える。
 基本的に、日本は安易な外国人の大量受入れはするべきではないと思う。日本政府はテコでも「移民政策」という言葉を使いたくないようだ。「外国人労働者の受入れ」(一時滞在の外国人)という言葉で目くらましをしている。
 日本政府は「送りだす」という意味での「移民政策」はさんざ実施してきた。今は「送り出した延長としての受入れ国策」をする段階ではないか。
 ブラジルで生活していてつくづく思うが、実態としては「移民=外国人労働者」だ。にも関わらず、日本政府は「外国人労働者は一時滞在だから、社会的な保障を考える必要がない」という言い訳にしている。「住めば都」との言葉の通り、必ず何割かは永住しようとする。
 外国人一般を大量受け入れする前に、まずは日系人で「実質的な移民政策」を試してほしい。まずは、すでに日本国内で永住権を取得したブラジル人が、日本で安定した資格を確保できるように日本国籍への帰化手続きを安易化してほしい。
 それと同時にブラジルからの親族呼び寄せが幅広く、より簡単にできないか。すでに日本で5年も10年も生活している人なら、日本の生活や習慣には習熟している。その人たちが「呼びよせる」ことで、彼らが新参者の責任を負うようにすれば「日系四世受入れサポーター」と同じ様な役割を担える。家族の絆をテコにして、日本生活の指南役をかってもらうのだ。
 それに加え、日系以外のブラジル人も日本を気軽に体験できるように、日伯ワーキングホリデー協定を結んでほしい。WHは全ブラジル人が利用可能で働きながら滞在できる。昨年10月にはアルゼンチンと、今年2月にはチリとのWH制度が始まった。
 「日本の若者は外国へ出たがらない」「内向き志向」と指摘されて久しい。ブラジル在住者としては、声を大にして言いたい。「外国に住んでこそ日本という国の本当の価値が分かる」。海外生活最初の一年は「痘痕もエクボ」だが、2年目、3年目からはより客観的にその国を判断できるようになり、同時に日本への公平な評価も下すようなる。
 世界最大の日系社会があるブラジルは、日本の若者を受ける器として一番ふさわしい。日本政府が若者の背中を押してでも、ブラジルに送りだすぐらいの積極性があっても良いのでは。
 日本国内で生活していたら、世界における日本の本当の価値が分からない。外から見た日本を知った若者が、日本に戻って生活を始めれば、内向き志向という社会体質が変わっていくはず。同質性が高い社会の中でも異文化を認める風潮が広がっていくのでは。
 日伯交流をさらに深めるにはビザ制度の整備は根本だ。日系人だけでなく110周年を記念して日伯WHを「1万1千人枠」で始める勢いが欲しい。(深)

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