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コラム 樹海

 ブラジル野球のレベルが向上し、それが日本でも評価され、さらに交流が一層密になってきている▼日本の大学野球とブラジルの野球との間に明確に縁ができたのは、一九五八年、日本移民五十周年の年、早稲田大学野球部が招かれて来伯してからである。当時の同部監督は、現在、全日本大学野球連盟常任理事の石井練蔵さんであった▼石井さんは今年、ある雑誌に書いた「『人』と神宮」と題した随想のなかで、ブラジル野球との出逢いについてふれている。およそ五十年前のブラジル野球の実力を早稲田と対比すれば、子供とおとなであった。全パウリスタとの対戦は五八対〇という大差。石井さんは「監督の私はただ試合を見つめるだけだった」と思い起こす▼半世紀後のブラジル野球は、石井さんの目にはその進歩が凄まじいと映った。今年夏の神宮球場の大学選手権に白鴎大学が登場した。一回戦快勝、二回戦は強豪東北福祉大と互角に渡り合った。白鴎のエースと四番がブラジル人留学生だった。石井さんは、キューバ人コーチ招聘と国際試合の積み重ねが向上を生み出したと知った▼神宮球場には、さらに今年、国際少年野球大会に参加した十二歳以下の子供たちが見学に訪れた。球場長の厚意だった。本物の球場の感触を確かめて感激、いい思い出を残したと、石井さんは温かく書いている▼訪伯以来の親伯の人にとっては、今年、神宮球場であった二つのブラジル野球がらみの出逢いがよほど印象深かったのだと思われる。(神)

05/11/23

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