樹海

先月、サンパウロ市内で18回を数える国際ワイン市「EXPOVINIS」が開かれた。11カ国400のワイナリーが出展し、3日間で約2万人が来場する南米最大規模の催しだ。ワイングラス片手に〃取材〃。ヨーロッパからの参加が多いが、もちろんサンタカタリーナ、南大河の南部2州に注目した▼飲み比べてみたが、それぞれの表情の違った芳醇さに目を見張りつつ、やはり唯一の日系農協ワイナリー「SANJO」が気になった。2010年にはベルギーでのコンクールに入賞し、イギリスにも輸出を始めているという▼多くの読者がご存知のように、SANJOは実はリンゴですでにに名を轟かせている。高地のうえ寒冷地。農業に不適といわれていたが、日本人移民が苦労の末、一大生産地に成長させた。「FUJIといえばSANJO」といわれるほど▼それから数十年。新たな生産物を模索していたころ、専門家に「ワイン用のぶどう生産に適している」と言われたことから、次世代の日系青年らが会社を設立、着実に歩みを進めてきた。カべルネ、ソーヴィニョンブラン、シャルドネ(収穫量順)を栽培、年間約8万リットルを生産。2600平米の加工・醸造所にはヨーロッパから最新式の設備も導入した▼今年3月、千葉の幕張メッセであったアジア最大の食品展示会「FOODEX JAPAN」にも初出展。輸出までの道のりはまだまだ遠いようだが、ブラジルに渡った父祖の開拓精神はしっかり引きいでいるようだ。そんなことを思いつつ頭はクラクラ。仕事に熱心すぎて、グラスをペンに持ち替えるのが少々遅れたようだ。(剛)

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