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結婚、出生ともに約600件=増え続ける日伯婚の絆=日本で積み重なる血縁=定住化デカセギの最前線

ニッケイ新聞 2013年4月19日

 日本人と在日ブラジル人は対等な婚姻をし、続々と子孫を増やしている——と読めるような統計が厚生労働省から発表されている。米国人と日本人の結婚は圧倒的に米国人の夫の方が多いなど、国際結婚は国力関係の違いを反映する傾向があるとは昔から指摘されていることだが、日本人とブラジル人の場合は比較的その差が少なく、平均年600件の日伯婚が挙げられ、600人の子供が生まれていることが分かった。

 移民と移住先国の人間との夫婦関係が論じられる時、経済力や国力のある移住先国の男性と、移民女性が結婚するケースが多いと言われるが、日本のブラジル人の場合はそのかぎりではないようだ。
 厚生労働省が発表する国際結婚件数の統計によれば、フィリピンの場合、07年に夫日本人・妻フィリピン人は9217件、その逆が162件だったのがその顕著な例だ。
 米国の場合、同年の夫日本人・妻米国人は193件だが、その逆は1485件もある。日本における婚姻であるにも関わらず、日本人妻の比率が高いのが特徴だ。
 中国の場合だと、同年の夫日本人・妻中国人は1万1926件もあり、在日中国人の総数が多いだけに「夫が日本人」総数3万1807件の3分の1以上を占めるほど多い。逆は1016件であり、経済力が夫婦関係に影響を与えているようだ。
 これらに比べてブラジル人の場合は毎年600件弱だが、夫ブラジル人、妻ブラジル人がほぼ半数であり、「対等」といってレベルのようだ。日系人に対する日本人の差別意識が少ないという証拠ともいえそうな数字だ。
 ただし、日本人とブラジル人の婚姻は統計を取り始めた1995年には579件、2000年時点でも357人もいたことを思えば、在日ブラジル人数がもっとも多い31万余人を数えた08年は322件を記録したとはいえ、今世紀は600件弱の安定期に入ったのかもしれない。
 デカセギブーム最盛期の1992年頃から年平均300件の婚姻が続いていると仮定すれば、昨年までに1万2千件もの日伯婚夫婦が生まれていることになる。
 残念ながら入国管理局統計には、ブラジル人がどれだけ帰化したかが出ていないので不明だが、実際には、日本人と結婚するために日本国籍に帰化したブラジル人が数多くいると言われる。この種の〃事実上の国際結婚〃もかなりあるようだが、統計には表れてこない。
 表にある通り、同厚生労働省の統計によれば、どちらか片親がブラジル籍の子供は毎年600人あまりも出生している。片親が外国人のケース全体の2万4千人からすると3%程度と、そう多くはないが、日伯婚の数から考えれば少ない出生数ではないと言えそうだ。
 定住化が進むデカセギの中でも、最も日本社会に近い位置にいる「中間層」のようなブラジル人たちだ。時間と共にその存在の厚みが増すことで、在日ブラジル人コミュニティ自体が徐々に日本に溶け込んでいく先駆けとなりそうだ。


日本人とブラジル人の国際結婚件数(厚生労働省発表)

2006(平成18)年=夫日本人・妻ブラジル人285件、妻日本人・夫ブラジル人292件(片親が外国人の婚姻総数4万4701件)
2007(平成19)年=以下同様に妻ブラジル人288件、夫ブラジル人341件(4万0272件)
2008(平成20)年=妻ブラジル人290件、夫ブラジル人322件(3万6969件)
2009(平成21)年=妻ブラジル人273件、夫ブラジル人290件(3万4393件)
2010(平成22)年=妻ブラジル人247件、夫ブラジル人270件(3万0207件)


片親がブラジル人の出生児数
2007(平成19)年=父日本人・母ブラジル人268人、母日本人・父ブラジル人389人(片親が外国人の総数は2万4177組)
2008(平成20)年=【計651】人ブラジル人249人、父ブラジル人402人(2万3956組)
2009(平成21)年=【609人】母ブラジル人235人、父ブラジル人374人(2万2511組)
2010(平成22)年=【592人】母ブラジル人230人、父ブラジル人362人(2万1968組)

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