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ブラジルに於ける茸栽培の沿革と一考察=野澤弘司=(5)

ニッケイ新聞 2013年4月24日

《マッシュルーム栽培フローチャート(1970年代の一般的な栽培法)》

(1)菌床材料仕込み=稲藁、牧草、バカソ,馬糞、米ぬか、フスマ、化学肥料、微量要素等の菌床原料に加水しながら、巾、高さ共に約2mの堤防状に積み上げる。
(2)堆肥の切り返し=人力又はターナーでの切り返しを、7日毎に4回繰り返す。堆肥の芯温が約80℃に達し、異臭が無くなり、芳香を発したら完熟堆肥とみなす。堆肥の水分は軽く握って、水分が指の隙間から滲み出る位が目安。
(3)堆肥の二次醗酵=完熟堆肥を蒸気燻蒸室に移動して、室温62℃で6時間、降温48?52℃で12日間の蒸気加熱処理後,約14日間堆肥を放冷する。
(4)堆肥の袋詰め=プラスチックの袋に完熟堆肥約10kgずつ袋詰めする。袋詰め菌床は延床より作業性も、発茸率も良いので袋詰め菌床が圧倒的に多い。
(5)植菌=1袋10kgの菌床当たり約150gの種菌を、菌床の表面に植菌する。
(6)覆土=植菌約1ヶ月後には、菌床に菌糸が繁殖して蔓延して後に覆土する。覆土は予め表土を除去した土壌の粒度やPHを調整し,厚さ約3cmに覆土する。
(7)発茸=覆土の適切な水分管理により、覆土後約4週間程で茸が発生する。
(8)収穫=キノコの収穫は約2ヶ月間継続し、満月の前後は比較的多く発生する。潅水は毎日適宜行う。収穫後に出来た窪みは覆土で埋めて菌床の蘇生を計る。
(9)出荷=収穫後は速やかに石付きを除去し、冷暗所に保存する。また公的機関が認可した、漂白や保存性を促す薬品を用いて品質の向上を計る場合もある。商品の荷姿は特定の紙箱、ビニール袋やプラスチックの容器に入れ出荷する。

《社会への広報》

 1953年、古本は自己のマッシュルーム栽培体験を、当時の月刊農業誌CHACARAS EQUINTALESに寄稿した。これに刺激されてか各邦字紙も“マッシュ ルーム栽培法”なる投稿記事が頻繁に掲載される様になった。1954年、前述のデイエルベルゲル商会は、古本からの委託販売種菌に添付する、栽培法の詳細を網羅した小冊子を古本に執筆を依頼し配布した。1957年、有力紙 O ESTADO SAO PAULOは古本のキノコ栽培事業を特集記事として掲載し報道したので、広範囲の読者から反響を呼んだ。1960年代、有力誌MANCHETEも古本のマッシュルーム研究成果を度々掲載した。1972年、このようなマスコミの関心と市場での需要の高まりがあいまって、マッシュルームが新興農産物としての社会的な認識と脚光を浴びて来たので、各市中銀行が好条件での融資の便宜を栽培者に提供し、更なる栽培意欲を煽った。

《主要栽培地とその栽培者》

 ブラジルには当時、マッシュルームに関する公的機関の統計は無かったが、主要な産地としてはサンパウロ州が突出し、次いで微々たる量であったがミナス州、リオ・デ・ジャネイロ州、リオ・グランデ・ド・スール州等であった。サンパウロ州内の主産地であるモジ・ダス・クルーゼスやスザノ近郊のラジオは、毎朝マッシュルームの取引相場を報道していた。
 山口食品加工工場=1953年マッシュルームの試験栽培を始め、1966年にはビン詰め加工を創業する迄に至った。 アメリコ・パゾニ=カンピーナス近郊でブラジルでは最初の、アメリカ式完全空調設備の菌舎を建設し、終年栽培を実践した。アントニオ セルキリオ=カンピーナス近郊の大農場主で、大規模栽培者。内山明治=1955年、標高1600mのカンポス・ジョルドンで、終年冷涼な気候の栽培条件を利用して、順調な栽培を誇ったが20年後の1975年に、栽培事業から撤退した。オスカル・モレーナ=アチバイアの大手栽培者。種菌の販売事業にも成功した。日系人栽培者=推定約70家屋が栽培に従事。この内60家族がモジ、スザノに在住した。当時のマッシュルーム栽培面積は総計13万8500m2と推定された。

《マッシュルームの生産量》

 ブラジルに於けるマッシュルームは生食用と、加工用に分けて流通しているが、殆どが国内消費で輸出はされていない。この要因は当時の世界的な経済不況もさる事ながら、他の生産国に較べ、人件費や材料費の高騰で生産コストは高く、単位面積当たりのキノコの生産量も低く、国際競争力を喪失して居る事、朝市等での需要が大幅に伸び、常に内需は品不足を来していた事等に起因する。

《マッシュルームの年度別推定生産量 トン/年》

1976年=2200 1977年=2000 1978年=1800 1979年=2500 2008年=4500



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