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『弓場勇』など2冊刊行=「毀誉褒貶あるロマンチスト」

ニッケイ新聞 2013年5月16日

 弓場農場の創始の人生を描いた『弓場勇の生涯』(大浦玄編著、大浦文雄監修)と『子供移民・大浦文雄』ポ語版(同、非売品)の出版記念会が11日正午から、スザノ福博村の大浦農園で開催され、サンパウロ市からバス1台含め友人らが駆けつけ、約70人でにぎわった。
 当日出席しなかった『弓場勇』の出資者・天野鉄人さんに関し、彼が尊敬する弓場がアリアンサに到着した時に電撃的に得た〃啓示〃の意味を「この本を出すことで知ろうとしていたのでは」と大浦玄さんは推測した。勇のひ孫、サンパウロ市在住の弓場蘭さん(27)が弓場家を代表して挨拶した。
 『弓場勇』の論評をした人文研元所長の宮尾進さんは「著者が神戸まで取材に行き、多くの人に話を聞いて8カ月で書き上げたと聞き驚いた」と語った。父厚が力行会の渡辺農場の主任をしていた関係で「弓場勇は父の教え子だった」とし、「弓場はロマンチストで毀誉褒貶のある人物。それを良く描いている」と評した。
 『子供移民』ポ語版の製作に尽力した、文雄さんの長女白石和子さんが「父は永遠の夢追い人。その夢の一つがこれで実現した」と喜んだ。妻千代子さん(二世、82)も「私はまだ読んでないけど、ポ語に訳されるのを楽しみに待っていた」と語った。
 1959年、学生時代に文雄さんと知り合ったという渡部和夫さんが『子供移民』を論評し、「私は二世、彼は準二世として当時からお互い役割を語り合った仲。準二世がどう人格形成されたかを、二、三世が理解するための好著」と薦め、「彼のような準二世が現在のコムニダーデの基礎を作った」と高く評価した。
 最後に文雄さんは、ポ語版出版をした家族全員を前に並べて紹介して感謝し、高橋幸衛さん製作による梟の姿をした文雄さんの〃狂〃像の除幕が行われ、「私の家はまだ完成していない」と子孫に夢を託した。参加者は午後4時までゆっくりと旧交を温めた。『弓場勇』は各日系書店で70レアルで販売中。

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