ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年6月7日

 フォーリャ紙2日付けは現存する最古の外国語新聞、イタリア語「ファンフーラ」紙が今年120周年を迎えたのを機に、国内の移民コミュニティ新聞の特集を報じた。ファンフーラ紙は1966年には週刊、2011年からは隔週刊に減じ、《活力ある外国語新聞の代表はすでにイタリア語でなくなり、現在では中国語、韓国語、日本語というアジア系の言語の新聞各2紙ずつが雄という時代になった》と書く▼日本語新聞は一世読者の高齢化と共に漸減傾向、中国語の中でも台湾系新聞は創立30周年にして読者高齢化の波にさらされている一方、大陸系中国人はここ20年で激増したことを受けて別の中国語新聞が96年に創刊したとの国際人流を描く▼台湾系新聞の幹部は《新世代は中国語学習に困難をおぼえ、時間と共に読者が減っている》と語り、昨年末には別の台湾系週刊新聞が閉刊したと明かした。華僑ですらも当地では同化する訳だ▼この記事からすれば近年目立つボリビア、ドミニカ、アフリカ系移住者はこれといった新聞を出しておらず、かつて隆盛を誇ったドイツ語新聞も存在感を失ったようだ。奇しくも、ほぼ同じ週に朝日新聞とフォーリャ紙という日伯の代表的な新聞で弊紙のことが、続けざまに報じられるという身に余る栄光に浴した▼誠にありがたいことではあるが、見方を変えれば、このような外国語新聞の盛衰からは、欧州、アフリカ、中東、中南米からの移民は当地適応が容易だから邦字紙がすぐに消え、文明の境を超えてきた東洋系は困難だから長く続くのかもしれないことが読み取れる。ゆえに邦字紙が果たす役割は大きいのだろうと痛感した。(深)

image_print