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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年7月9日

 7日のNHKで「運命の遺伝子」と題した番組を見た。遺伝子研究が進み、病気のリスクを未然に知って対策を採る事が可能になり始めたという話に、ブラジルでも病気の姉を救うために病気の遺伝子を持たない受精卵から生まれた妹の骨髄を移植した話を思い出した。ハリウッド女優が乳がんのリスクを減らすために乳房を切除した話は全世界で話題となった▼だが、中国では学問や芸術・スポーツの世界で開花できる才能の持ち主か否かを判断してエリート養成を実施、11個の受精卵を送りつけてどの卵を使うかを選ぶための検査を依頼した夫婦が居る等々の話に、薄ら寒さも覚えた▼病気で苦しむのは本人も家族も辛いし、認知症や糖尿病を起こす可能性があると知っていたら若い頃から気をつけていたという人もいるだろう。だが、遺伝子研究がここまで進んだのは病などとの闘いの結果であり、病気や障害を持つ家族や友人が居る事で、思いやりや助け合いという社会生活に不可欠なものを身に付ける人も多い▼遺伝子研究の恩恵を思う存分受けられる人はまだ限られる中、〃人間的に見て良い〃遺伝子を持つ人のみが歓迎され、病気のない社会やエリートばかりの世界が出来る時が来るかもと考えてしまうのだ▼その昔、著名な科学者との結婚を望んだ一人の美女が「あなたの知性と私の美貌を備えた子供が生まれたら素晴らしいと思わない?」と言ったところ、相手は「あなたの知性と私の容姿を備えた子供が生まれたら」と答えたという話もあった。科学の進歩は必要だが、それが能力や個性の多様性を狭め、目に見えるものだけ重視する世界を生まない様願いたい。(み)

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