樹海

 ジウマ大統領再選が決まってから1週間。当選後に「対話」第一と語った大統領だが、決選投票直前に次期政権がどのようなものとなるかを示す発言があったという▼その言葉は「私は自由だ」というもので、それを聞いた側近達は「選挙戦が終って自由になれる」という意味よりも、「再選されたら自分の裁量で政権をリードできる」という意味で理解したという▼ジウマ氏は何事も自分で決めないと気がすまないタイプで、自分の見方や考え方を変えない事で知られている。この傾向がより強まれば、後見役であるルーラ氏の提言さえ拒否する例が増えるのは目に見えている上、この1週間でも既に、自分の見解にそった決定を下すという傾向が見られたともいう▼対話重視との約束と、自分の見解が絶対という姿勢はどう考えても折り合わないが、ジウマ氏はこの両者をいかにして融合させるのだろう。通常なら選挙直後の週は本会議を開かない連邦議会は、ジウマ氏が5月に出した、国民投票に向けた大統領令を無効化する議案承認という異例の行動に出た後、「今こそ対話が必要だ」と語った。これはジウマ氏の人柄を知りかつ自分達に有利に運ぼうとの思惑故と言えまいか▼自分が絶対という考えからは、相手に聞き、学ぶ姿勢は生まれない。「次の選挙は自分には関係ないから」と先達や党内の声に耳を閉ざし、国民や市場の声をも遠ざける事態が生じたりすれば、18年選挙への出馬を表明済みのルーラ氏に後足で砂をかける事にもなる。「水を飲む時は井戸を掘った人の事を忘れてはならない」というが、ジウマ氏にそのような謙虚な思いはありやと考えさせられる報道が続いている。(み)

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