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日本移植民の原点探る=レジストロ地方入植百周年 ◇前史編◇ (19)=南部に延びる鉄道構想=〃ファル帝国〃に心酔

ニッケイ新聞 2013年7月19日

1866年時点のコロニア・ドナ・フランシスカ=現在のSC州ジョインビレ=

1866年時点のコロニア・ドナ・フランシスカ=現在のSC州ジョインビレ=(『170 anos de Imigracao dos Povos de Lingua Alema』23頁, L. Otto Niemeyer)

 南部3州はドイツ、イタリア、ポーランド移民などによって開拓され、ファルクァールが経営する鉄道会社がどんどん工事を進めている現状を見て、青柳は《欧洲の豊富なる資本と、之が営業の衝に当れる北米人の建設的才幹とは相待って、益々此事業を進捗せしめつつあるが故に、今日尚未開の域を脱せざるパラナ、サンタカタリナの如きも、恐らくは今後数年にして其交通機関の整備と共に拓植事業の完成に近づくべし。殊に同会社が其鉄道をパラグワイ国に延長し、又亜爾然丁の既設線と連絡せしめ其計画の目的を達するに至らば、伯国南部の諸州は更に一層外国人の注目を惹き、更により以上の加速度を以て移住民の数を増加するに至るや火を睹るより瞭かなる処なり》と結論している。
 つまり、南部3州は今後数年で鉄道が通じ、近いうちに亜国やウルグアイとの一大通商拠点に成長すると予測した。つまり亜国、南部、聖州、リオが繋がるとの壮大な展望が空想されたようだ。
 実際、当時の南部三州は首都リオからあまりに遠く、孤立した土地柄であった。実際、南部が鉄道でつながることは、国家統合にとって不可欠なことだった。
 青柳は連載4回目に《リオ・グランデ鉄道の営業権を掌握する伯国鉄道会社の計画によれば、当所よりイグアッスウ河に沿うて、同河下流の大瀑布に達する約四百二十余哩の鉄道は、当所桑港間約二百七十哩の線路落成次第、直に架設工事に着手せらる可き事疑を容れず。同鉄道の関係者は今より五、六年の後に、桑港よりパラナ河に達する約六百八十哩の横断鉄道を全部竣工せしむべしと声言し居れり。想うに北米人はパラナに於て、今や鉄道事業に依りて確実なる根拠を有するが故に、是より漸次其支線を同州未開地方に延長し、之と関連して種々の事業を興すに至るべく製村事業は即ち其一なり。今後パラナの開発は北米人の精力と資本とに負う所必ずや大なるべし》との所感を記している。
 おそらく「桑港」とは、パラナ〃グア〃のことではないか。クリチーバ=パラナグア鉄道(110キロ)は1880年に工事を開始し、1885年に試運転をした。山岳鉄道のような難工事区間の連続であり、当時としては欧州の最新技術がつぎ込まれた最新の鉄道だった。港と繋がった州都クリチーバの先、さらにイグアスの滝まで支線を延ばす構想があった。
 連邦政府はファルクァールが南部3州を開発するために創立した「南伯材木・植民会社」へ1908年に無償土地譲渡契約(コンセッソン)を与えていた。青柳は同じことが東京シンジケートでも可能なはずだと閃いたのではないか。
 このようにクリチーバ以南の南部は、米国人の国際的大企業家が投資する有望な地であり、今後5、6年間のうちに鉄道が整備されて、いっきに発展する場所だと青柳は踏んだわけだ。
 青柳の目から見たレジストロ地方は、大浦農商務大臣が期待する「世界一の米処」だけでなく、桂首相が喜びそうなドイツ移民が活躍する新開地・南部と聖州を結ぶ要衝地になりそうな立地で、しかも自らの北米経験からして成功間違いなしと心酔する〃ファルクァール帝国〃が建設する鉄道が近くを通る場所だった。
 だから、東京シンジケートは1912(明治45)年3月8月に聖州政府と官有地の無償払い下げ契約を結び、翌13年に実際に土地払い下げを受けた。
 これに対し、水野龍は同じ『時事新報』(東京)の1912(明治45)年7月6、7日に、「伯拉西爾通信」(上、下)を寄せた。青柳の24回連載の直前というタイミングだ。その中で、青柳が聖州政府と結んだ契約に関し、《これは実に国民あげてその成功を支援するべき事柄だ》と祝福を贈っている。(つづく、深沢正雪記者)

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