ホーム | 日系社会ニュース | 続々と増える日系ブラジル人学生=静岡文芸大で多文化イベント=日語ゼロから大学進学へ

続々と増える日系ブラジル人学生=静岡文芸大で多文化イベント=日語ゼロから大学進学へ

ニッケイ新聞 2013年10月19日

 静岡文化芸術大学と日伯交流協会(共に浜松市所在)が主催する多文化プロジェクトが11日から20日まで行われている。初日には本紙の深沢正雪編集長が招へいされて講演したほか、当地で公演をしたお芝居デリバリー「まりまり」が集めた寄せ書きと写真の展示会(20日まで)とポルトガル語演劇の発表、12日には地域の外国人生徒への学生による学習支援を総括するシンポジウムも行われた。

 同大学西ギャラリーで開催された展示会「届け! お芝居デリバリーと私たちの想い」は11日午前に開幕し、実行委員長の日系ブラジル人学生、宮城ユキミさん(19、サンパウロ市)は「いろんな人に支えられて今の自分がある。このような催しを通して、同じ境遇の子を支援して行きたい」と語った。同展示の実行委員会20人のうち6人が日系ブラジル人学生だ。
 宮城さんの父は戦後子供移民、母は二世。11歳で両親に連れられて訪日し、「本当は3年でブラジルに戻るつもりが、5年、8年」と笑う。まったく日本語ゼロの状態で小学6年に編入して苦労し、浜松市立高校のインターナショナルクラスに入り、大学進学を果たした。授業料は奨学金とバイトでまかなうなど自らも苦学を続ける中、後進育成に心を砕いている。
 展示会場には、昨年の本公演と一昨年の準備公演を当地で行った時に「まりまり」一行が集めた寄せ書き計32枚と、その時に撮影された写真約130枚が所狭しと展示され、両国のメッセージを伝え合う〃伝書鳩〃の役割を果たした。
 これらの企画を進めてきた池上重弘教授(50、北海道)は、「ここ数年で日系ブラジル人の学生がどんどん増えている。本学にはすでに10人が在学し、愛知県でも同様。外国籍者は支援される側でなく、自らがこのような行事を実行する側になってきた」との変化を強調した。
 12日には「まりまり」の萩原ほたかさんが指導した与信中学の国際交流部、ブラジル人学校アレクリア・デ・サベル生徒、同大学有志「ぷちまり」の初合同公演が行われ、ポ語劇などを市民ら約50人が鑑賞した。萩原さんは「みんな素晴らしい才能を持っている。展示も何とお礼を言っていいか分からない。自分のアルバムを公開しているような不思議な感じ」と笑みを浮かべた。
 11日の深沢編集長の講演テーマは「ブラジルの日本語メディアが見た日系人社会」で、今年入植百周年を迎えたレジストロ地方を一つのモデルに、平和灯ろう流しの映像などをみせて、移民が移住先国に日本文化が根付かせ、貢献している様子を通して、当地式の多文化共生の在り方などを説明した。浜松市に支局をおくマスコミ5社が取材に訪れ、連日取材をするなど話題を呼んだ一連のイベントとなった。

image_print