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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年12月24日

 11月から「まだか、まだか」と待ち続けていた人がいたのに、結局現れなかったもの。それはサンパウロ市セー広場に毎年飾られていたプレゼピオ(イエス・キリスト誕生の様子を表す家畜小屋を模った飾り)だ▼現代的な電飾ツリーはあるが、プレゼピオを見慣れていた人にとり、今年のセー広場はクリスマス色が薄れたのは否めない。「形が違っても祝う気持ちは一緒」と言われればそれまでだが、伝統や文化の重さを感じるのはこういう時だ▼異邦人である東方の博士や卑しい職業とみなされていた羊飼いが、「ユダヤ人の王」として生まれた救い主に会えるよう、神様は人口調査のための旅行者達で宿を埋め、イエス・キリストを家畜小屋で生まれさせた。セー広場のプレゼピオは来伯当時、キリスト教国だけあると実感させてくれたものの一つだった▼プレゼピオ撤廃は広場で寝泊りする路上生活者増加に伴う、治安上の判断だったかもしれない。だとしたら路上生活者救済を忘れた本末転倒のやり方ではないか。世界最初のクリスマスメッセージを聞いたのは、周囲から蔑まれ忘れられた存在だった羊飼いだった事を思えば、ブラジルなら、路上生活者にこそクリスマスのシーンを最初に見、聞かすべきだとも考えるからだ▼路上生活者達も座れるよう椅子を並べ、聖歌隊員らと共に、家出した息子と息子の帰りを待ち望む父親の話をしていた一団に感心したのは12月半ば。売らんかな主義で盛んになるクリスマス商戦は悲しいが、一人子を地上に遣わした神に倣い、クリスマスの喜びと互いへの愛を表す贈り物やもてなしを歓迎する人も多い。今日はイヴ。皆様も良きクリスマスを。(み)

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