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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年12月25日

 病床から「クリスマスプレゼント」として、日系福祉4団体に1千万円を寄付した元戦後移民の北島績さん(横浜在住)。彼がサンパウロ市時代に属していた「ひこばえ会」は戦後移民独身者の集まりだ。1963年頃に発足し、40人ほどが毎月のように文協で顔を合わせていた▼援協の竹田昊就職相談部長と共に創立者の一人だった田村吾郎さんによれば「6年ぐらい続いたかな」と懐かしむが、「北島績という名は記憶にないな」と首をひねる▼23日に援協の菊地義治会長から「北島さんとの約束通りに、アラサー墓地にある山本勝造・千代夫妻の墓に献花をしてきた」との電話をもらった。墓地職員と共に草取りなど墓掃除をした菊地会長は「十数年間、誰も墓参りしていないかのような感じだった」との印象を漏らした。あれほどの有名人でも、子孫のない同夫妻の〃移民の墓〃はそんな様子だったようだ▼菊地さんは念仏を唱えて、献花に「北島績」と書き添え、「ご夫妻への報恩の気持ちで北島さんが寄付をされた」と仏前に報告した。「なんだかとても清々しい気分になったよ」との岩手弁が弾んでいた▼寄付金贈与式の顛末を伝えるメールを援協が北島さんに送ったが、返事はない。送金を受け取った旨を援協が伝えた後、北島さんからの「之をもって最後の連絡といたします」との通信が、言葉通りになり、もしや病状が悪化したかとの憶測も流れている。奇しくも献花した12月23日は千代夫人の命日——これも何かの縁だろう▼本年の新聞発行は今日が最後で、新年特集号の後、通常の新聞は3日付から。読者のみなさま、良いクリスマスと新年を!(深)

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