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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年2月11日

 日本に「いつまでもあると思うな親と金」という諺がある。親はいつか死ぬし、お金も使えばなくなるから「独立心を養い、倹約を心がけよ」と戒める言葉だ▼一方、1月28日にリオで起きた歩道橋落下事故で奇跡的に助かった女性へのインタビューと共に、息子さんが母親の大切さを再認識し、「新しく生まれ変わった命を大切に生きるべきだという事を学んだ」と語る様子を10日に見た▼事故後などに「失っても不思議ではなかった命」という認識を持つ人は多いが、普段からそういった切迫感を持つのは難しいし、親がいるのは当たり前という生活の中でわがままになる人も多い。冒頭に上げた諺に、「親も金もいつかはなくなる、親孝行は親が生きている間しか出来ない」という意味も入れたくなる▼伯国では交通事故や殺人事件に巻き込まれて死ぬ人が多く、地域住民が流れ弾に当たったりして死んだ事に抗議するバス焼き討ちなども頻発する。それゆえ、命の大切さや毎日を大切に生きるべき事に気づく機会は多い筈だが、毎日が漫然とあるいは慌しく過ぎていく事のなんと多い事か▼日々新しい感動を覚えながら生活する事は難しく、大変な状況を必死に乗り越えた後は、当時味わった苦しさや人々の温かさを忘れ、親や恩人とも喧嘩してしまうというのも人の常。家庭内暴力などで、誕生直後はあれ程愛おしかった我が子への殺意を抱く母親さえいる▼両腕欠損、左足は右足の半分の長さだが障害者五輪の水泳に出た事もある歌手のレーナ・マリアさんは、「自分の手足が愛おしく、日々感謝している」と言う。こんな心の豊かさこそが一服の清涼剤だとしみじみ感じる。(み)

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