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ぷらっさ=善人と花盗人

河合五十一

 人間はそれぞれの考えをもって生きて行きます。
 小生の家の前に市の小公園があります。ただ芝生だけの公園なので、殺風景に感じていました。 95歳まで働いて野菜作りを止めたので、時間に余裕が出来此処に花を植えようと思うようになり、シチオに有ったエストリッタの苗を二株植えて、大きくなるのを楽しみに手入れをしました。
 2年程して美しい花を5、6輪咲かせました。大喜びをして楽しんでいると、或る夜花盗人が根こそぎ皆持って行きました。
 植える前から予期していたので、驚きもしませんでした。これがブラジル人の知恵だと思っていましたから。
 それから2回目を植えました。2年ばかりして美しく花が咲いた頃を待っていたように、二株全部を持って行かれました。一度あることは二度あると言いますが真実でした。
 しかし花盗人に負けず3回目を植えました。同じ様に2年後美しい花を咲かせた頃を待っていたように抜いて、今度は現場に捨ててありました。この行為は小生に悲しみと憤慨を与えてくれました。そしてこの時点で続けてやるかそれとも中止するかでした。
 いろいろ考えた末、このまま中止すれば小生が敗者になるのだと思い、良い事をする人間が悪人に負ける事等考えられない、と思い直して4回目を三ヶ所に植えました。 現在美しい花を咲かせています。此れで小生の精神的な満足と神の援助のあった事に感謝しています。誰もやらない事に成功した、102歳青年の喜びです。こうして老人のボケが書ける事も誇りに思っています。

(2014.3.22掲載)

 

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