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焼津母子3人殺人事件=被告人尋問に被告が出廷=黙秘権行使、何も語らず=事件から8年、公判再開

 静岡県焼津市で2007年12月、日系人母子3人を殺害した直後に帰伯逃亡した疑いで国際指名手配され、昨年8月からブラジル内で拘留されているエジウソン・ドニゼッテ・ネーヴェス被告の被告人尋問が1日午後、サンパウロ市バーラ・フンダ区の刑事裁判所で行われた。
 被告人尋問は一般公開されず、開始後わずか10分ほどで終了した。担当のネウデヴァル・マスカレニャス・フィーリョ検察官がメディアの取材に応じた。
 検察官によれば、被告が出廷後、裁判官は人定質問をし起訴状が読み上げられた。その後質問に答えるか、それとも黙秘権を行使するかどうかが尋ねられ、被告が後者を選ぶと言ったために、「それ以上検察側から質問はできなかった」という。検察官は「尋問前に、被告は弁護人と面接する権利がある。そこで弁護士が(黙秘権を行使するように)指示したのだと思う」とのべた。
 裁判官は今後、例外的に検察側の論告・求刑、弁護側の最終弁論を10日の期限を設けて書面で求めることを決定した。その後、裁判官が被告を陪審裁判にかけるか否かを決定し、1週間~10日の間に書面で公表するという。
 検察官は「おそらく(陪審法廷は)開かれるはず。なぜなら鑑定書で示された証拠がある」との考えを示す。裁判官が陪審裁判を行うことを決めた場合、これに対する弁護側からの異議申し立てがなければ裁判が開かれ、判決が下されることになる。
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 裁判所のサイトによれば、昨年8月、10月に証人への質問状が嘱託書として日本側に送られているが、現在もブラジル側に戻っていない。
 しかし検察官は、「この嘱託書がまだ届いていないからという理由で、裁判の進行は妨げられない」と説明する。しかし嘱託書は、最終的に陪審裁判の前までに戻される必要がある。
 弁護側は、この嘱託書が戻っていないということを理由に尋問の延期を求めたが検察側がこれを拒否し、既に1年が経過していることから、裁判官も嘱託書の到着を待たずに尋問に踏み切った。
 ネーヴェス被告は帰伯後、国内に潜伏していたが2008年1月にサンパウロ州サルタイアー市で逮捕された。日本政府による国外犯処罰の要請で同年2月にサンパウロ市で最初の陪審裁判を受けたが、「国外での犯行のため裁判は連邦裁判所の管轄」と判断され、半年後にいったん釈放されていた。
 事件発生から既に8年が経過しており、事実上再び最初からやり直していることになる。「進行が遅れているのでは」との質問に検察官は「一度釈放されたのが問題だった。もっと早く進行すべきだった」と嘆いた。
 検察として何年の懲役を求刑するかとの質問には「最高刑を望む。最低でも60年の懲役を求刑したい」と話した。

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