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子育てに不寛容な日本社会

 日本最高裁が「妊娠や出産を理由とした降格は違法」との初判断を示した。妊娠や出産をきっかけに女性が職場を追われたり、嫌がらせを受けたりすることを「マタニティ・ハラスメント」といい、日本ではこうしたケースが後を絶たない▼「休むと迷惑」「仕事を続けたければ子供は諦めろ」と圧力をかけられたり、過労により流産するケースもある。妊婦の扱いがこれでは少子化になるのが当然だが、企業にしてみたら「妊娠は迷惑だが少子化は困る。誰かが何とかして」という発想なのだろうか▼少し前、〃ベビーカー論争〃というのも勃発した。通勤ラッシュ時にベビーカーを畳まず電車に乗るのはマナー違反かという議論だった。「せめて畳んでほしい」「ラッシュ時は避けてほしい」といった意見が多かった。母親のマナーが悪い場合もあるのだろうが、そもそもこうしたテーマが議論に上ること自体、子育てへの不寛容さの表れだ▼当地で出産した日本女性は、例外なく「ブラジルは子育てしやすい」と言う。バスや電車の中では席を譲ってもらえるし、道を歩くと町中の人が声をかけてあやしてくれるし、大半の飲食店には子供用の椅子があり、時にはボーイが遊んでくれる▼かといって躾の甘い当地のやり方を賛美する気はないが、仕事の効率や時間を優先するあまり、子供であれ妊婦であれ、それを障害とみなす日本社会のあり方は、国の繁栄の根を絶つという意味で自虐的だ。世界有数の発展を誇りつつも、仕事をしながら趣味や育児を楽しみ、家族と幸せに暮らす―そんなゆとりある社会がなぜか遠い。「旅行で行くには良いが住むのは御免」と言う日本移民の気持ちが少し分かる。(阿)

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