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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年5月18日

 もう古い話だけれども、子どもの頃にイナゴを煮たのをよく食べさせられた。あまり美味いものではなかったが、田舎の村では、どうも昔から伝わる食習慣らしく、仲間の悪たれ小僧らも田圃や灌漑用の堀で蛙を捕まえ火で焼いたのが「うまいんだ」と自慢していた。岐阜の山奥では「蜂の子」が好まれ、食べ物の王様とされているの話を耳にしたのは学生になってからだが、このように昆虫を食べるのも、地方色豊かというか—とても多彩なものらしい▼こんな食卓風景は日本だけかと思っていたら、世界では20億人を超える人々が毎日のように「昆虫を食べている」のだそうな。しかも、バッタや甲虫など1900種を越える虫をパクパクと舌に乗せニコニコしていると国連食糧農業機関(FAO)は報告している。それも昨日や昨年に始まったのではなく大昔からの伝統食であると指摘している▼そして—「栄養万点」とし、鉄分などは牛肉よりも多いそうだ。と、いいことずくめなのだが、味の好みもあるし匂いや昆虫の姿格好もあるし、誰しもが「ご馳走さま」と参るかどうか—と疑問も多い。FAOは、人間だけではなく、鶏などの家畜の飼料としても活用したいと推奨し、昆虫は飼育しても温室効果ガスを殆ど出さないので環境破壊も極めて少ないと褒め称える▼だが、TVの映像などによく登場する「食」をテーマにした映像には、食材としての昆虫がよく出てくるが、残念ながら食欲はまったく起こらないし、むしろ拒絶反応が強い—と、ここは国連のお奨めながらほどほどに食べる—で勘弁して貰い手打ちとしたい。(遯)

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